ANGIO室 中央放射線棟地下1階

血管造影検査,IVR(Interventional Radiology)とは

頭部から四肢まで全身を対象にカテーテルと呼ばれる細い管を血管内に挿入し,造影剤を注入しながら連続的にX線撮影することで血管の形態や血流状態を把握し,病変を診断する検査です。この血管造影手技による治療を血管系IVR(血管内治療)といいます。一般的に外科的な手術に比べ身体にあたえる負担が少なく,入院期間を短縮できるなどの特徴があります。

検査中の風景
検査中の風景
検査中の風景
検査中の風景

ANGIO室について

全身用と心臓用のバイプレーン装置2台を含めた計4台の血管撮影装置が稼働しています。心臓カテーテル治療を支援する機能として,ステントの視認性を向上させるステント強調や冠動脈の走行を視覚化させるDynamic Coronary Roadmap を搭載しています。またコーンビームCT搭載の装置では回転撮影することで,高精細な3D画像や従来のCT画像に近い画像(CT like image)を構築できます。
スタッフは各科の専門医師を中心に,専属の診療放射線技師,看護師,臨床工学技士によって構成され,患者さんが安全かつ安心して検査,治療を行えるようにサポートしています。

Artis Zee(Siemens社製)
Artis Zee(Siemens社製)
Azurion7 B12(Philips社製)
Azurion7 B12(Philips社製)

当院で行っているIVR

頭頚部領域

脳動脈瘤に対するコイル塞栓術

脳動脈瘤とは脳の動脈のある部分がコブ状に膨らんだもので,動脈瘤の中にプラチナ製の金属コイルを詰めこむことで,動脈瘤の破裂を防ぎます。3D画像により血管を立体的かつ多方向から観察できるため,動脈瘤の大きさや形態,血管走行の把握が容易になります。また3D画像は塞栓術を行うための角度の決定には欠かせない機能で,より安全に治療を行うことをサポートします。

治療前
治療前
治療前 3D画像
治療前 3D画像
治療後
治療後
治療後 3D画像
治療後 3D画像
急性期脳梗塞に対する血栓回収療法

脳梗塞とは脳の血管が詰まって血流が途絶え,脳細胞が壊死する病気です。できるだけ早く詰まった血管を開通させて後遺症を残さないようにする必要があります。発症から8時間以内であれば血栓回収療法の適応となります。また発症時間不明の脳梗塞に対しても脳梗塞が完成していない画像所見を認めた場合には,最終健常確認時刻から24時間以内まで適応されます。

治療前
治療前
治療後
治療後
頸動脈狭窄症に対する頸動脈ステント留置術(CAS)

頸動脈狭窄症とは首の動脈が細くなる病気で,脳梗塞の原因となります。狭窄部にステントを留置することでプラークの破綻を防ぎ,脳梗塞を未然に防ぎます。ステント留置後に希釈造影剤を用いた回転撮影からMPR像を構築し,血管内腔評価を行います。

治療前
治療前
治療後
治療後
3D画像
3D画像
MPR像
MPR像

胸腹部領域

肝細胞癌に対する肝動脈化学塞栓療法(TACE)

肝細胞癌は肝臓に発症する悪性腫瘍です。腫瘍を栄養している血管を選択的に同定し,抗癌剤及び塞栓物質を注入して腫瘍を壊死させます。CT like imageにより栄養血管の同定や腫瘍濃染の確認が明瞭となり,また術後における塞栓物質の集積を評価することができます。

治療前
治療前
CT like image
CT like image
治療後
治療後

心臓領域

急性冠症候群(急性心筋梗塞,不安定狭心症)や安定狭心症に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)

PCIとは狭窄や閉塞した冠動脈に対してバルーンカテーテルやステントを用いて血管を拡張し,心筋への血流を回復させる治療です。血管内超音波(IVUS)や光干渉断層法(OCT)を用いて血管径を正確に計測し病変部のプラーク性状を把握することで,最適なバルーンやステントサイズの選択が可能となります。

治療前
治療前
治療後
治療後
IVUS画像
IVUS画像
不整脈に対するカテーテルアブレーション(心筋焼灼術)治療

通常の脈よりも速くなる不整脈に対して,カテーテルの先端から高周波電流を流し,不整脈の原因となっている異常な電気信号の発生箇所を焼灼することで不整脈の根治を目指します。

3Dマッピングシステム
3Dマッピングシステム

四肢領域

閉塞性動脈硬化症に対する血管形成術

閉塞性動脈硬化症は足の血管の動脈硬化がすすみ,血管が狭窄,閉塞して十分な血流が保てなくなる病気です。バルーンカテーテルを用いた動脈の拡張やステント留置を行い,末梢への血流を改善します。

治療前
治療前
バルーン拡張
バルーン拡張
治療後
治療後

実績件数

検査名 2020年度 2021年度 2022年度
脳動脈瘤コイル塞栓術 19 33 45
血栓回収療法 22 8 21
頚動脈ステント留置術 6 7 9
心臓カテーテル検査 464 445 339
経皮的冠動脈インターベンション 224 216 186
アブレーション治療 273 296 343
肝動脈化学塞栓療法 196 183 132
下肢血管形成術 41 47 53

単位:件

Q&A

検査は痛いですか

最初に局所麻酔をするとき痛みを感じますが,検査中のカテーテル操作時に痛みを感じることはありません。個人差はありますが,血管の狭窄部位をバルーンで拡げるときに痛みを感じることがあります。また造影剤の注入時に体が熱く感じることがあります。

検査時間はどれくらいですか

検査内容や患者さんの状態,病変の位置などで所要時間は異なります。

検査名 所要時間
脳動脈瘤コイル塞栓術 3〜4時間
血栓回収療法 1.5〜2時間
頚動脈ステント留置術 1.5〜2時間
心臓カテーテル検査 1時間
PCI 1.5〜2時間
アブレーション治療 2〜3時間
TACE 1.5〜2時間
下肢血管形成術 1〜2時間

検査後の安静時間はどのくらいですか

検査後はしっかりとした止血が必要となり,使用したカテーテルサイズやカテーテルを挿入した場所によって安静時間も異なります。手首や肘からの場合は検査終了直後から歩くことが可能ですが,専用の器具を4〜6時間程度装着する必要があります。足の付け根の場合は6〜8時間寝たままの状態で安静にする必要があります。

放射線被ばくは大丈夫ですか

血管造影検査はX線透視やX線撮影を行うため,その他のX線検査に比べると被ばく線量は多くなります。特にIVRでは透視時間や撮影回数が多くなり皮膚障害を生じることもあります。患者さんが可能な限り少ない被ばく線量で検査を行えるように,診断参考レベルを活用して線量の最適化を行なっています。

検査が不安です

検査時には医師,看護師,診療放射線技師が近くにいますので,少しでも不安があれば何でも聞いてください。ただし検査中は手や足,体を動かしてしまうと危険ですので口頭でお願いします。

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