熱傷(やけど)
熱傷(やけど)は熱湯や蒸気、熱した油、アイロン、火など熱いものに接触することにより皮膚が損傷された状態です。熱傷は皮膚のどの深さまで損傷されたかによりI度〜III度に分類されます。
I度の熱傷
表皮のみの熱傷で、赤くなるだけですが痛みを伴います。通常3〜4日でキズアトを残さずに治ります。「日焼け」はI度熱傷です。
II度の熱傷
真皮におよぶ熱傷で、水疱(水ぶくれ)を形成します。真皮の表層までの浅いII度熱傷と真皮深層におよぶ深いII度熱傷があります。
浅いII度熱傷は軟膏や創傷被覆材による治療を行うことで2週間以内に治り、一時的な色素沈着を生じることがありますが、キズアトを残さずに治ります。
一方、深いII度熱傷は、治るのに3週間以上を要し、広範囲の場合には手術を要することもあります。キズアトを残して治ります。当科では、深いII度熱傷に対しては細胞増殖因子製剤(bFGF製剤)を積極的に使用して、なるべく手術を行わず、キズアトも目立たなくなるように配慮した治療を行っています。
III度熱傷
皮下組織までおよぶ熱傷で、皮膚は硬く、水疱の形成は観られず乾燥しています。皮膚の再生は期待できないので、原則として手術が必要となります。
広範囲に及ぶ場合には熱傷性ショック状態を呈し、救命処置を要しますので、救命救急センターと連携して治療を行っています。
熱傷の初期治療
熱傷を受傷したら、まず水道水で十分に洗浄、冷却を行ってください。その後、湿らせた布やタオルで創面を保護し、その上から保冷剤などで冷却しながら外来を受診ください。ただし、直接保冷剤を創面に当てると冷やしすぎによる障害も起きますので注意してください。時間外でも救急外来で受け付けます。
熱傷の後遺症
深いII度熱傷やIII度熱傷では、キズアトが残ります。更に、キズアトが盛り上がって強い痒みを伴う肥厚性瘢痕やケロイドという状態を呈することがあります。また、関節などでは瘢痕拘縮(ひきつれ)を生じると機能的障害を伴うこともあります。これらの後遺障害についてはキズとキズアト外来で治療を行っています。
特殊な熱傷
化学損傷
酸やアルカリによる皮膚の損傷です。受傷したら、水道水で十分に洗浄してから外来を受診してください。フッ化水素など、特殊な治療を要する化学物質もあります。
電撃傷
電流による組織の損傷です。皮膚のみならず、神経・血管、筋肉などにも損傷がおよぶことがあります。また、不整脈を起こすこともあり慎重な経過観察を要します。
低温熱傷
携帯カイロ、電気あんか、ホットカーペットなど短時間の接触では熱傷を来さない程度の温度の熱源に長時間接触することで生じる皮膚の損傷です。受傷時には浅い熱傷と思われても、時間経過とともに深達性となることが多く注意を要します。