瘢痕・ケロイド・瘢痕拘縮 はんこん・けろいど・はんこんこうしゅく

様々な原因で体表面についたキズアトは精神的・心理的な負担となることがあり、それらを手術で軽減することで苦痛や悩みを解消することも形成外科の大切な役割の一つと考えています。形成外科では、キズに対する治療において、縫合手技、創管理、アフターケアを徹底することで、キズアトを最小限とし、極力目立たなくするような治療を実践しています。

使用する縫合糸も特殊な針付きモノフィラメントナイロン糸を用いて、皮膚の損傷を最小限としています。

キズアトの治療のためには、キズアトを切除し、形成外科の特殊な手技(真皮縫合術)を用いて再縫合する瘢痕切除術を行っています。その場合、健康保険適用外となることがあります。詳しいことは担当医とご相談ください。

また、しわの方向に直交するキズアトは目立つので、再縫合時にジグザグにすることで更に目立ちにくくする工夫をしています。

整容的な改善を目的としたキズアトの治療は保険適用外診療なので、自費診療となります。

ケロイドと肥厚性瘢痕

皮膚が傷ついたあとに元通りに治らずにキズ跡が盛り上がって目立つようになったものを「ケロイド」や「肥厚性瘢痕」と呼びます。

ケロイドと肥厚性瘢痕の区別は難しいのですが、一般的に、「ケロイド」は赤褐色に盛り上がった硬い腫瘤で、激しいかゆみや、痛みを伴うことが多く、腫瘤の形が複雑で表面の凹凸が強いものでは、深部で感染(化膿)を起こし、排膿(うみが出ること)を繰り返す場合もあります。またもとのキズ跡よりはみ出して広がることが多いと言われ、自然に治ることはまれであり、軽快後も再発することがあります。一方、「肥厚性瘢痕」はさまざまな程度の赤味を伴った盛り上がりの状態で、もとの傷跡よりはみ出して広がることは少なく、自然に成熟して肌色になることもあります。

ケロイド、肥厚性瘢痕の原因としては、けが、やけど、手術後のキズなどがあげられます。ケロイドは、遺伝的要素(体質)が影響していると言われています。

また、ケロイドや肥厚性瘢痕が顔面や関節部にかかる場合はひきつれ(拘縮)を起こし、機能的な問題や運動障害の原因となります。

よくできる場所は肩、胸、膝や恥骨部などです。また最近はピアス穴をあけた耳たぶにも多く見られます。

治療法とその効果

保存的治療

内服治療

抗アレルギー剤を内服します。

圧迫療法

スポンジによる圧迫やシリコン製のジェルシートを長期間貼ることで成熟を促します。

外用剤による治療

ステロイド剤の入ったテープや、ステロイド剤軟膏を使用します。第一選択の治療法です。

ステロイド注射

主にケロイドに対して行ないます。ステロイドの注射液を盛り上がった部分に注射します。上記のテープよりも即効性が期待できます。

手術治療

ケロイド、肥厚性瘢痕の治療は保存的(手術を行なわない)治療が原則です。手術治療は保存的治療の補助手段と考え、手術を行っても再発予防のために保存的治療を早期から行う必要があります。安易に切除を行って再発を起こすと、元のケロイドより大きくなってしまうこともあり、注意が必要です。症例によっては手術後早期からの電子線照射が有効とされており、当院では放射線科と協力して手術直後から電子線照射を行っています。

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