多発外傷
身体を,頭部・頚部・胸部・腹部・骨盤・四肢などと区分した場合に,複数の身体区分に重度の損傷が及んだ状態をいう。受傷機転としては,鋭的外傷よりも鈍的外傷による損傷が一般的である。重症度を定量化する指標として,各身体部位の解剖学的損傷の程度で評価するAIS(abbreviated injury score)があり,一般的に,AIS3以上が複数区分にある場合を「多発外傷」と呼ぶ。各部の損傷は相互に関連しながら重篤化するので臓器別・領域別に特化した診療科の分担的な治療では救命が困難である。外傷診療においては初期の段階から多発外傷の可能性を念頭におき,総合的に判断して治療優先順位を決定することが極めて重要である。そのためには部位ごとの確定診断や治療に固執せず,全身的緊急度を重視し,生命に関わる損傷に対する処置を最優先とする。
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