眼瞼下垂症
眼瞼下垂症とは,上瞼(うわまぶた)が下がってきて,物が見えにくくなってくる状態のことをいいます。
それには,生まれつきの先天性眼瞼下垂症と後天性の眼瞼下垂症があります。後天性の眼瞼下垂症のほとんどは,加齢性眼瞼下垂症といって,年齢とともに上瞼の皮膚がたるんだり(皮膚性),上瞼をもち上げる筋肉が伸び切ったり(筋性),固定部がゆるんだりする(腱膜性)のが原因です。頭痛・目の奥の痛み・肩こり・首筋の張りの原因ともなります。
主な症状
まぶたが重く感じる
目が開きにくい,視野が狭くなる
額にシワを寄せて目を開けるため,頭痛や肩こりが出る
眠そうに見える,表情が暗く見える
無意識にあごを上げて物を見るようになる(視野確保のため)
原因と分類
・加齢性眼瞼下垂
最も多いタイプで,皮膚性,腱膜性,筋性,混合性に大別されます。
加齢や長年のコンタクトレンズ使用などで,皮膚が伸びたり,まぶたを持ち上げる筋肉(眼瞼挙筋)とまぶたの連結部分がゆるむことで起こります。
・先天性眼瞼下垂
生まれつき眼瞼挙筋の発達が不十分なタイプで,小児期から症状が現れます。
治療法
・余剰皮膚切除術:皮膚性眼瞼下垂に対して,重瞼線(ふたえのライン)や眉毛の下でたるんだ皮膚を切除します。
・挙筋前転術:腱膜性眼瞼下垂に対して,ゆるんだ腱膜を修復して本来の位置に戻します。最も一般的な術式です。
・吊り上げ術(筋膜移植など):重度の先天性下垂など,筋力が乏しい症例に対して行います。加齢性眼瞼下垂でも眼瞼挙筋機能が著しく減弱している場合(筋性)には適応となることがあります。
麻酔と手術時間
手術は局所麻酔で行います。
小児の先天性眼瞼下垂症の場合は,基本的には全身麻酔下で手術を行います。
入院について
術後の腫れを最小限とするために,術後の創部の圧迫と冷却を行いますので,基本的に1泊入院で行っています。高齢者や抗凝固薬を服用している人では数日の入院が必要な場合があります。
全身麻酔の場合は前日からの入院となり,最低で2泊3日の入院が必要です。
保険適応となります。
経過
瞼の腫れの予防に術後数時間は冷却します。抜糸は術後1週間で行います。3~4週間は瞼が腫れますので,淡い色のサングラスをかけることをすすめています。キズアトや腫れが完全に落ち着くには4~5ヶ月ほどかかります。術後は腫れが完全に落ち着くまで外来で経過観察を行います。
結果
見える範囲が広がり見えやすくなります。また,頭痛や肩こりがあった人では改善することがあります。外見的には,ひたいの皺が目立たなくなり,上瞼がのびていた人では短くなります。
合併症
血が止まり難い薬(抗凝固薬)を服用している方や高齢者では,術後に皮下内出血で瞼が暗紫色になることがありますが,3週間ほどで自然に消えます。ある期間,ドライ・アイという眼の乾きを訴える人がありますが,そのような人では慣れるまでは目薬をさします。その他,顔つきが若返った感じがしますが,眼つきが厳しく見える方もいます。また,ひたいの皺が目立たないぶん,瞼の内側や鼻根の小じわが目立ってくることがあります。
眼瞼下垂の改善の程度(瞼の皮膚の切除量)などによって術後の顔の印象が変わりますので,術前に担当医とよく相談することが大切です。