食道がん、食道疾患 しょくどうがんしょくどうしっかん

1 食道とは

食道は、長さ約24cm、太さ2~3cm、厚さ約4mmの臓器で、咽頭から気管の後方、椎体の前面を下行し横隔膜を貫き胃に入っていきます。食道の壁は、内側から外側に向かって粘膜(粘膜上皮・粘膜固有層・粘膜筋板)、粘膜下層、固有筋層、外膜に分かれています。食道自体には消化や吸収の機能はなく、口から入った食べ物を胃まで蠕動運動により輸送する役割を果たしています。

上部食道は背骨の前側にあり,食道の前方には気管,甲状腺があります。

中部食道では上部で気管の後ろ側にありますが気管が左右に分かれる分岐部近くでは大動脈弓と左の主気管支が食道の左前側に位置します.気管分岐部より下では心臓が左前方向で接しており、重要臓器に囲まれて走行していることがわかります。

 

2 診療対象の食道疾患

食道がん、食道粘膜下腫瘍、食道アカラシア、食道裂孔ヘルニア(胃食道逆流症)、食道憩室、難治性逆流性食道炎など食道疾患全般

 

3  食道疾患に対するさまざまな治療

(1)食道がんの治療 

食道がんは、2020年がん統計予測(国立がんセンター)によると、年間罹患数は26,300人(総癌罹患者数の2.6%)、癌死亡数11,100人(総癌死亡数の2.9%)を占めています。

飲酒と喫煙がその主因と考えられていますが、最近ではフラッシャーとよばれる飲酒後の皮膚の発赤を伴う人に多いことも指摘されています。60歳代の男性に好発し、食道の中間(胸部中部)にできやすいのが特徴です。欧米では食道がんの半数以上が腺癌(胃の組織と同じ)であり、その大半が食道下部に発生するのに対し、日本では92%が扁平上皮癌であることがわかっています。

食道がんは初期症状がないことが多く、表在癌(初期の食道がん)では60%近くの患者さんが無症状です。進行してくると、食べ物を飲み込んだときに胸の奥が痛む、食道で食べ物がつかえる、体重が減少する、声がかすれるなどの症状があります。また食道がん切除後の約15%に重複癌(転移ではなく全く別の癌)が生じることが報告されており、食道がんが根治できた患者さんでも定期的な全身検査が必要となります。

(食道癌上部内視鏡)

 

[ステージ別治療方針(アルゴリズム)]

食道がん治療ガイドライン 日本食道学会 第」12版 2022年度より

食道癌の治療法には手術、内視鏡、放射線化学療法などがあり、病期分類、病状に応じた治療法が選択されます。

(病期分類)

(病期分類別治療方法)

 

a外科治療

Stage I~IIIまでが外科手術の適応となります。Stage II,IIIに対しては術前化学療法を行い、その後手術をおこなう治療が一般的です。術式は、より患者様に低侵襲におこなうため胸腔鏡手術をあらゆる病期に対して導入しており、StageIVaに対する放射線化学療法後の救済手術(サルベージ手術)も積極的におこなっています。最近では手術不能食道癌症例に免疫チェックポイント阻害剤を併用した化学療法を施行し、奏功した症例に対し施行するConversion surgeryも経験しています。

(従来の大開胸の創部)                 (当院で施行している胸腔鏡下手術の創部)

    

(画像)

   

b. 化学療法

FP療法、DCF療法を中心におこなっています。主要臓器への浸潤が疑われる症例やStageIVbに対しては、化学療法に免疫チェックポイント阻害剤を併用し使用しています。また、セカンドラインとしてパクリタキセルなど薬物治療に熟知した癌治療認定医により施行しています。

 

c. 放射線治療

StageI~StageIVbまですべての病期において適応があり、全身状態が悪く開胸手術の適応のない患者様(肺機能、心機能的に耐術能のない)に対しても施行の可能性のある治療です。2Gy/dayを通常30回(6週間)施行します。腫瘍の形や体積に応じ、周囲の正常組織にあたらないよう照射量を調整できるIMRT(強度変調放射線治療)を導入しており、副作用の少ない効果的な照射を施行します。通常は化学療法と併用し施行する化学放射線治療が一般的ですが、骨転移など疼痛緩和目的で行うこともあります。主要臓器への浸潤を強く疑うT3(Br)やT4症例に対しては途中40Gyで縮小率を評価し手術へ移行する症例もあります。

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食道がんの深達度が粘膜層2/3にとどまっている場合は絶対的適応とし、また粘膜下層1/3までの深達度では相対的適応として、内視鏡的粘膜下剥離術(ESD)を施行しています。また腫瘍が2/3周までを適応としておりますが、それ以上の病変に対しても積極的に導入しています。合併症として狭窄や穿孔も報告されていますが当院では熟練した内視鏡医による治療が行われています。

(2)食道アカラシア

食物を胃まで送るための食道の蠕動運動の減弱、欠落、下部食道括約筋の弛緩不全により食物通過が困難となり食道が異常拡張する病態です。20-50代と比較的若年発症が多く、10万人に1人程度の珍しい疾患です。当院においては

アカラシアブジー、腹腔鏡下手術(ヘラードール法)にて加療を行っています。

上部消化管造影

直線型とシグモイドタイプ

(食道の拡張と蛇行を認める)

上部内視鏡検査

(食道に残渣を認め拡張している)

(3)食道裂孔ヘルニア

通常は横隔膜内に収まっているはずの胃が食道裂孔を通じて縦隔側へ脱出した病態。主な症状は胸やけ、胸痛などで高齢女性に多く認められます。加齢・肥満・生まれつき食道裂孔がゆるいなどが原因になります。当院では薬物療法(PPI)と腹腔鏡手術(Toupet法)を施行しています。

上部内視鏡検査

(胃の一部が食道へ脱出している)

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