肺腫瘍
肺腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍(肺がん)があります。肺がんは肺そのものから発生したものを原発性肺がんといい,他の臓器から発生し肺に転移したものを転移性肺がんや肺転移といいます。通常肺がんといえば原発性肺がんを指します。
特徴
肺の良性腫瘍は気管支,肺実質,血管,胸膜などから発生し,肺腫瘍全体の2~5%を占めます。
肺の良性腫瘍は様々な種類がありますが一番多いのは過誤腫であり約50~70%を占め,その他には硬化性血管腫,軟骨腫,脂肪腫,平滑筋肉腫などがあります。
肺がんは早期であれば手術が最も治癒の期待できる治療法ですが,発見されたときは進行していることが多く手術や放射線治療,抗がん剤治療などを組み合わせた治療が選択されます。全身がんの中でも最も治療が難しいがんの一つと言われています。
肺がんの原因は70%がタバコと言われていますが,その他に受動喫煙,環境,食生活,放射線,薬品などが挙げられます。
症状
肺の良性腫瘍は無症状がほとんどで,多くの場合健康診断や他の疾患のために行った検査で発見されることが多いです。
肺がんに特徴的な症状はありませんが,初期段階では目立った症状が出ないことがほとんどです。咳,痰,倦怠感,体重減少など様々な症状がありますが,血痰は肺がんの可能性が高く専門医への受診をお勧めします。
診断
- 胸部レントゲン検査やCT検査で疑わしい陰影が見つかった場合は確定診断・組織型診断のためにさらに詳しい検査を行います。痰の細胞診や気管支鏡検査,CTガイド下針生検などで腫瘍の一部を採取しがん細胞の有無を調べます。
- 胸水が貯まっている場合には胸腔に針を刺して胸水を採取しがん細胞の有無を調べます。
- がんの進行度を調べる検査には全身CTやPET-CT,脳MRI,骨シンチなどがあり,ステージ分類(病期分類)を行います。
以上の検査を行い肺がんの種類(腺がん,扁平上皮がん,大細胞がん,小細胞がんなど)と病期を診断し治療法を決定します。
病期分類は転移のないものから進行がんまで4段階(Ⅰ期,Ⅱ期,Ⅲ期,Ⅳ期)に分類します。
治療
- 肺がんの治療は組織型で大きく異なります。
- 小細胞肺がんは進行が早く発見時には他の臓器に転移を認めていることが多いです。その場合は抗がん剤治療が選択されます。他の臓器への転移を認めない場合は抗がん剤と放射線治療の併用療法を行います。
- 非小細胞がん(腺がん,扁平上皮がん,大細胞がん)ではⅠA期では手術のみ,ⅠB期から手術可能なⅢA期は手術後に抗がん剤治療を行うことが一般的です。手術不可能なⅢA期とⅢB期では抗がん剤と放射線治療の併用療法を行います。放射線治療が行えないⅢB期とⅣ期ではがん薬物療法(抗がん剤,分子標的薬,免疫チェックポイント阻害剤など)を行います。
- 近年肺がん治療は目覚ましい進化を遂げており,がん薬物療法に加え放射線機器の進歩などが治療成績の改善に大きく寄与しています。