急性膵炎
急性膵炎とは
膵液という消化酵素で膵自体が消化され,膵と周囲の臓器に急激な炎症が起こる病気です。主な原因はアルコール,胆石であり,男性ではアルコール性が,女性では胆石性が多いです。その他にも内視鏡治療や薬剤,高脂血症,腫瘍,ウイルス感染などでも発症することがあります。原因が特定できない特発性の割合も低くはありません。男性の発生頻度は女性の約2倍であると言われております。年齢分布では男性は60歳代,女性では70歳代に最も多いとされております。
症状
主に急激な腹痛・背部痛や悪心・嘔吐,腹部膨満感がみられます。また時に,発熱や黄疸を伴うこともあります。
診断
- 上腹部の痛み,押すと痛いなどの症状がある
- 血液検査,尿検査で膵酵素の上昇がある
- 腹部超音波検査やCT,MRIで膵臓に炎症を伴う画像がある
のうち2項目以上を満たし,他の疾患が否定された場合,急性膵炎と診断されます
治療
急性膵炎の初期は高度の脱水状態となるため大量の輸液を行います。さらに膵臓の周囲の感染を抑える目的で抗菌薬治療を,膵酵素の活性化を阻害する目的で蛋白分解酵素阻害薬という薬剤を使用します。また,腹痛が強い場合は鎮痛剤を併用します。重症の場合,炎症が全身に波及し多臓器不全をきたす場合があります。その際は人工呼吸器や血液透析を含めた集中治療を行います。急性膵炎発症後1ヶ月くらいで膵臓周囲の液体貯留増大による嘔吐などの消化器症状や,液体貯留に感染を伴い重篤化することがあります。その時は内視鏡や外科治療などにより治療を行います。
当科ならではの急性膵炎診療
急性膵炎後の局所合併症(膵周囲の感染を起こした液体貯留:被包化壊死)に対する超音波内視鏡を用いた経消化管的治療を積極的に行なっています(図,ドレナージ術など)。
図 急性膵炎後被包化壊死に対する金属ステントを用いた内視鏡的経胃的ドレナー術