膵がん
膵がんとは
一般に膵がんとは,膵臓の中にある膵液の通り道である膵管の細胞ががん化した浸潤性膵管がんを指します。この膵がんに対する手術療法や抗がん剤治療は,年々,進歩していますが,膵がんは未だ予後(見通し)の悪いがんの一つです。このため,現在のところ予後を改善する最も良い方法は早期の状態で膵がんを発見することです。
膵がんになりやすい状態(危険因子)
家族性(第一度近親者一人でリスクは4.5倍,二人で6.4倍とされています),糖尿病(リスク2倍),肥満,タバコ,アルコール,膵嚢胞(膵臓の中にできる袋)などが,膵がんになりやすい因子として証明されています
症状
腹痛,背部痛,体重減少などの症状がありますが,特異的な症状はなく,特に2センチ以下の小さな膵がんの3/4は症状が見られないとの報告もあります。また,糖尿病で発症することも少なくなく,55歳以上で急に糖尿病になった方,糖尿病で通院中に急激に糖尿病の数値が悪化した場合は要注意です。
診断
気になる症状のある方,症状がなくても膵がんの危険因子が二つ以上ある場合は,検査がすすめられます。検査の方法として,造影C T検査,M R I検査,そして超音波内視鏡検査があります。特に超音波内視鏡検査はC TやM R Iでは検出できない小さな膵がんを発見することが可能です。また,病理組織検査による膵がんの確定診断が必要な時は超音波内視鏡を使って超音波内視鏡下穿刺吸引細胞・組織診(EUS-FNA)を行います。
治療
進行度や体の状態に応じて,外科治療(膵頭十二指腸切除術,膵体尾部・脾切除)や抗がん剤治療(GnP療法,FOLOFILINOX療法)が行われます。また,膵がんによる黄疸がある場合は内視鏡的胆道ドレナージ術(ステント療法)が行われます。
当科ならではの膵がん診療
危険因子がある場合,急激な糖尿病発症や悪化の場合に,例え症状がなくても膵がん検査を行うことが,膵がんの早期発見に繋がります。当科では超音波内視鏡を積極的に行い,膵がんの早期発見に取り組んでいます(図)。また,消化器外科と緊密に連携し,内視鏡治療,手術療法,抗がん剤治療を行っています。
図 C T(右)では検出できなかった1センチの小膵がんを超音波内視鏡で診断(左,矢印)