乳児血管腫(イチゴ状血管腫)
乳児期で最も頻度の高い脈管性良性腫瘍です。
形態によって局面型,皮下型,腫瘤型およびそれらの混合型に分けられます。出生後から腫瘍性に増殖しますが,1歳を過ぎると自然退縮します。
特徴
- 日本での有症率は1.7%で,男:女=1:3~9といわれています。
- 発生部位は頭頸部(60%),体幹25%),四肢(15%)の順に多いと報告されています。
- 自然に退縮しますが,未治療の場合24.8~68.6%に瘢痕などの後遺症が残ることが報告されています。
症状
乳児血管腫は生後数日~数週に出現し,徐々に増大し血流が豊富となり赤みが強くなります。生後5~6か月時に増殖のピークを迎えますが(増殖期),1歳以降は徐々に縮小し退色傾向となります(退縮期)。3歳以降になると多くの場合は消失し(消失期),一部の症例で瘢痕を残すことがあります。
皮下組織に発生する皮下型の場合は,体表に腫瘍が露出していないため,皮膚の隆起や青みがかった皮膚の色調の変化で気づかれることが多いです。
乳児血管腫が発生する場所によっては臓器・器官に特異的な症状が出ることがあり,緊急の治療対象になることがあります(例:まぶたの乳児血管腫で視野欠損が起こる等)。
診断
問診および視診で過去1~2週間で腫瘤が増大しているか(増殖期の場合)を確認して診断します。皮下型の場合は超音波検査やMRI検査で診断します。血管奇形などの他の脈管性腫瘍との鑑別が困難な場合は,生検をして診断することがあります。
MRI検査
体表から見えない皮下型や混合型で,病変の大きさや位置を確認するために行います。治療効果判定に行うこともあります。
治療
治療は生命や機能に重大な問題をきたす可能性が高い場合は緊急で治療を開始します。部位・大きさ・症状から整容的な問題がある場合は治療対象となりますが,整容的・機能的問題が少ない場合は無治療で経過観察をすることもあります。通常,生後2ヶ月をすぎた時点から治療は開始できます。治療終了は1歳が一つの目安になります。
現在,治療の第一選択はプロプラノロール内服療法が推奨されています。その他,局所治療としてレーザー治療や外科的治療などがあります。血管奇形にはプロプラノロールの適応がないので,診断をきちんとつけることが大切です。
参考文献
- Hidano A et al.: Pediatr Dermatol 3(2): 140-144, 1986
- 血管腫・血管奇形・リンパ管奇形診療ガイドライン2017
- Bowers RE et al. Arch Dermatol 82:667–80,1960
- Baselga E et al.:JAMA Dermatology 152(11):1239-1243, 2016
- Bauland CG et al.:Plast Reconstr Surg 127(4):1643-48, 2011