横紋筋肉腫 おうもんきんにくしゅ

横紋筋肉腫は,いろんな部位の横紋筋のあるいは横紋筋に姿を変えたその他の組織から発生する悪性腫瘍です。病名に使用されている「横紋筋」とは,心臓を動かす「心筋」と体を動かす「骨格筋」を指しますが,横紋筋に姿を変えたその他の組織から発生する腫瘍のため,全身のあらゆる部位から腫瘍が発生します。

特徴

  • 特によく見られる発生部位は,泌尿生殖器(膀胱,前立腺,傍精巣,子宮,膣など),傍髄膜(鼻腔,咽頭,副鼻腔,中耳など),眼窩を含む頭頸部,四肢によく見られます。
  • 日本では年間に90人のこどもに腫瘍ができると報告されています。横紋筋肉腫の発症年齢は年長児(平均年齢:7歳)に多く,約62%が10歳以下に診断されます。また成人も含めた幅広い年齢層に発生し,米国の調査では30歳以上が全年齢層の40%を占めるとのデータもあります。
  • 発生要因は,多くの場合は不明です。近年,一部の横紋筋肉腫の発生に,遺伝子の変異が関与していることがわかってきました。しかし,この突然変異がなぜ起こるのかは,まだよくわかっていません。また一部の家族性腫瘍症候群(Li-Fraumeni症候群,Beckwith-Wiedemann症候群,NCFC(neuro-cardio-facial-cutaneous)症候群,遺伝性網膜芽細胞腫など)での合併報告もあります。
  • 転移しやすい部位:肺への転移が多いです。そのほかに転移する可能性がある部位は,骨,骨髄,リンパ節です。

症状

腫瘍が発生する部位により症状は異なります。一般に,局所(腫瘍が発生した部位)の腫れ(はれ)や痛みのほか,腫瘍の圧迫によって,さまざまな症状があらわれます。

  • 眼窩および上咽頭部の腫瘍:眼痛,眼球突出がみられます。
  • 鼻・咽頭腔の腫瘍:鼻閉,声質の変化,粘液膿性の分泌物がみられます。
  • 泌尿生殖器の腫瘍:腹痛,腹部腫瘤,排尿困難,血尿がみられます。
  • 四肢の腫瘍:硬い腫瘤が四肢にみられます。

診断

まず,血液検査,尿検査,画像検査,骨髄検査などで全身検索行います。また,傍髄膜(ぼうずいまく)に腫瘍があることが疑われる場合には,髄液検査も行われます。その後,発生した腫瘍を同定し,最終判断は生検(腫瘍の一部を切り取ること)を行って診断します。

画像検査

腫瘍の場所や大きさ,広がりなどを確認するためにCT検査,MRI検査,PET-CT検査,核医学検査などの画像検査を行います。そのうちPET-CT検査は,腫瘍の活動状態(腫瘍が活発かどうか)を調べることができ,転移している場所を知るのに有用です。また,腫瘍の発生部位によって,予後良好部位(比較的治りやすい場所)と予後不良部位(比較的治りにくい場所)があります。

予後不良部位

四肢 会陰・肛門周囲 膀胱 前立腺 傍髄膜 体幹 後腹膜

予後良好部位

眼窩 眼瞼 頭頚部(傍髄膜を除く) 膀胱・前立腺以外の泌尿生殖器(傍精巣・陰唇交連・膣・子宮など)

血液検査

血液検査や尿検査などを行い,腫瘍による臓器への影響を判断しますが,いわゆる腫瘍マーカーが横紋筋肉腫には無いのが現状です。しかし研究レベルですが,血液中に腫瘍から漏れ出しているマイクロRNAという物質が横紋筋肉腫の腫瘍マーカーとなることを発見し,実用化に向けた研究が進んでいます。

病理検査(腫瘍生検)

腫瘍の一部(生検)または全部を切除して,その組織を顕微鏡で詳しく調べる検査を「生検」といいます。生検では,悪性腫瘍かどうか(病理組織診断),病気の細かい種類(悪性度)などについて,病理医が組織型や細胞の性質を詳しく調べて確定診断をします。またその組織型により治りやすさも判断できます(胎児型:比較的治りやすい,胞巣型:比較的治りにくい)。

上記検査や画像検査によって病期診断を行い,病理組織型と共にリスク分類をします。

治療

横紋筋肉腫の治療においては,化学療法,放射線治療,外科療法を組み合わせて治療が行われます。

化学療法

全ての横紋筋肉腫症例において行われます。ビンクリスチン,アクチノマイシンD,シクロホスファミドからなるVAC療法が,横紋筋肉腫の治療法として長期にわたり使用されてきました。

放射線治療

横紋筋肉腫の治療において重要な位置を占め,ほとんどの症例で行われます。かつては放射線照射した部位の体の成長が抑制されるなどの副作用(晩期合併症)が考慮されて減量や省略が試みられていました。しかし横紋筋肉腫では,「最初に手術で病理組織学的にも完全に腫瘍が取りきれた胎児型例」を除くほぼ全例において,腫瘍がもとあった場所に放射線照射を行わないと再発を予防できないことがわかりました。しかし小児にとって成長障害など長期的な影響も大きいので,放射線を当てる時期や量,範囲などの細かい規定や,治療後の経過観察の際に配慮が必要となります。

外科療法

横紋筋肉腫に対して初回に行われる手術には,腫瘍切除(一期的手術)と生検があります。1回の手術で腫瘍が完全に切除でき,機能や形態(外見)などへの障害が許容範囲であると判断される場合には,腫瘍切除(一期的手術)が行われます。しかし,横紋筋肉腫は重要な臓器に接して発生する場合が多く,切除により強い機能障害や見かけ(整容面)の問題を生じることが多いため,診断時から外科治療が行われる場合は多くありません。そういった場合は,まず診断目的に生検が行われます。その後,化学療法によって腫瘍を縮小させ,適切なタイミングで手術を行い,腫瘍をできるだけ切除する場合があります(二期的手術)。

治療期間

低リスク・中間リスク・高リスク群によって異なりますが,おおよそ低リスク群では6〜10ヶ月,中間リスク群では約10ヶ月,高リスク群では約1年3ヶ月とされています。

予後

最近の欧米やわが国の横紋筋肉腫スタディグループのデータでは,3年無増悪生存率(3年間,悪化せずに患者さんが生存している割合)は,低リスク群で80~100%,中間リスク群で50~80%,高リスク群で30~50%とされています。

参考文献

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