神経芽腫 しんけいがしゅ

神経芽腫は交感神経のもとになる細胞ががん化しておこる悪性腫瘍です。そのためこれらの細胞が存在している交感神経節や副腎髄質から発生することが多いです。

神経芽腫は悪性度の高いものから自然退縮といって自然に消えてしまうものまで様々な程度のものが混在しています。

特徴

  • 神経芽腫の発症頻度は,小児がんの中で3番目に多く(小児がんの発症頻度:1位白血病,2位脳腫瘍,3位神経芽腫),年間約300人の患者さんが発症しています。
  • 乳児期に発症することが多い特徴があります。
  • 転移巣としては骨,骨髄,肝臓,リンパ節,眼窩,皮膚などが多いです。

症状

病初期は無症状で経過するため,進行するまで気がつかないことが多いです。進行してくると発熱,全身倦怠感,食欲不振,顔色不良,Horner徴候*,呼吸困難,腹部膨満,頭部のこぶ,眼球突出,皮下腫瘤,歩行障害,膀胱直腸障害(排尿・排便障害)などがみられることがあります。

その他稀な症状として,オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群(眼球運動異常,小脳失調)や難治性下痢,高血圧などがみられることがあります。

*Horner徴候とは…交感神経の障害によって起こり,眼球陥凹,眼裂狭小(眼瞼下垂),縮瞳がみられる。

診断

腫瘍マーカー

尿中VMA(バニルマンデル酸),尿中HVA(ホモバニリン酸)は神経芽腫に特徴的な腫瘍マーカーで,ほとんどの症例で高値を示します。また,血液検査ではLDH,NSEが高値を示すことが多いです。

CT検査,MRI検査

原発巣や転移巣の大きさや位置関係など詳細をみるために行われます。

MIBGシンチグラフィー

神経芽腫に特異的に集積をするため,病変の広がりを判断することが出来ます。

骨シンチグラフィー

骨転移巣の検索に行います。

FDG-PET検査

原発巣,転移巣の広がりを判断するために行います。偽陽性が多い検査なのでCTやMRIなど他の検査と組み合わせて行います。

骨髄穿刺,骨髄生検

神経芽腫は骨髄転移をすることが多いので,初診時に左右の腸骨から骨髄の一部を取ってくる検査をします。

腫瘍生検

最終的な確定診断には腫瘍の一部を手術で採取し顕微鏡で病理診断することが必要となります。

ステージ分類

神経芽腫ではステージ分類だけで予後の判定や治療の層別化をするのではなく,ステージ分類に加えて,年齢,生物学的予後因子(MYC-N,病理分類)を組み合わせて,低リスク群,中間リスク群,高リスク群の3つのリスクに分類し,予後を判定しリスクに応じた治療を決定します。

  • 国際神経芽腫リスクグループ病期(INRGSS):治療前の画像診断で病期を決定するステージ分類




  • 神経芽腫国際病期分類(INSS分類):検査結果と手術の所見を合わせて判定するステージ分類

リスク分類

一般に神経芽腫は臨床病期,年齢,腫瘍細胞内のMYC-N遺伝子のコピー数,国際病理分類(INPC分類),腫瘍細胞内の染色体の数の5つの予後因子を用いて3つのリスク群(低リスク,中間リスク,高リスク)に分類し,リスクに応じて治療法を選択しています。

低リスク群

以下の3つの条件のうち,いずれかに属する

  • MYCN 遺伝子増幅がない病期1,2A,2B
  • MYCN 遺伝子増幅がない病期3の乳児例
  • 病理分類で予後良好群に属し,DNA indexが1以上の病期4S

中間リスク群

以下の4つの条件のうち,いずれかに属する

  • MYCN 遺伝子増幅がない1歳~1歳半の病期3の児
  • MYCN 遺伝子増幅がない1歳未満の病期4の乳児
  • MYCN 遺伝子増幅がなく,国際病理分類で予後良好群に属し,DNA indexが1以上の1歳~1歳半の病期4の乳児
  • MYCN 遺伝子増幅がなく,かつ国際病理分類で予後不良好群に属するか,または,DNA indexが1の病期4Sの乳児

高リスク群

以下の4つの条件のうち,いずれかに属する

  • MYCN 遺伝子増幅がある病期2A,2B,3,4,4S
  • MYCN 遺伝子増幅がない1歳半以上の病期3の児で,国際病理分類で予後不良群に属するもの
  • MYCN 遺伝子増幅がない,1歳半以上の病期4
  • MYCN 遺伝子増幅がない1歳~1歳半の病期4で,国際病理分類で予後不良群もしくはDNA indexが1を示すもの

治療

低リスク群

手術のみを行います。手術で腫瘍が全て摘出出来ない場合や,再発を認めた場合のみ化学療法を追加します。化学療法はビンクリスチン,シクロホスファミドなどを組み合わせて2~3か月行います。

ただし,腫瘍による脊髄圧迫症状がみられた場合や,乳児の病期4Sで肝腫大により切迫する呼吸困難を認めるといった緊急の対応が必要な場合は,手術に先行させて化学療法や緊急放射線照射を行うことがあります。

中間リスク群

手術と化学療法で治療を行います。ビンクリスチン,シクロホスファミド,カルボプラチン,ドキソルビシンなどを組み合わせた化学療法を行ないます。化学療法は4~7か月行い,手術についてはどの時期に(化学療法を何コース先行させてから)行うことが適切であるか症例ごとに判定して行われています。転移がある場合は転移巣に放射線を照射することもあります。

高リスク群

手術,化学療法に加え,大量化学療法+自家造血幹細胞移植や放射線療法を行ないます。高リスク群は転移があったり,原発巣が大きく周囲の血管神経を巻き込んでいることが多いため,まずは化学療法を行ない転移巣の消失を図り,原発巣を縮小させます。化学療法はシクロホスファミド,ビンクリスチン,ピラルビシン,シスプラチンなどによる強力な治療を8~10か月行います。これらの化学療法を数コース行った後,手術を行います。高リスク群は手術の前後に,大量化学療法を行ない,骨髄の救済を図るために自家造血幹細胞移植を行います。大量化学療法はメルファラン,エトポシド,カルボプラチンの組み合わせが主流です。造血幹細胞移植は複数回行うこともあり,その場合,自家移植後に臍帯血移植が選択されます。放射線療法は骨転移巣や原発巣の腫瘍床に照射を行います。近年,副作用の軽減を図るために放射線照射に代わって陽子線照射を行うこともあります。治療後の維持療法として,レチノイン酸による分化誘導療法やGD2抗体(現在,保険承認待ち)を用いた免疫療法を加えることがあります。

治療成績

5年生存率は低リスク群:75%以上,中間リスク群:50~75%,高リスク群:約50%と推定されています。

参考文献

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