小児糖尿病
糖尿病は、1型糖尿病と2型糖尿病、その他の特定の病気による糖尿病に分類されます。いわゆる生活習慣病(食べすぎ、肥満)に関係するのが2型糖尿病です。1型糖尿病は生活や体型には関係なく、2型糖尿病とくらべて小児期に発症することが多いです。両者とも学校検尿で尿糖陽性で発見される場合もあります。
特徴
1型糖尿病
インスリンを分泌している膵臓の細胞を自分の免疫が攻撃する(自己免疫)ことで、インスリン分泌がなくなることが原因です。風邪をきっかけに発症することが多く、インスリン分泌がほぼなくなってしまうので生涯にわたるインスリン治療(補充)が必要です。発症は10-14歳の思春期に多く、やや女児に多い。10万人に2人くらいの頻度といわれています。
2型糖尿病
過食、肥満が原因になり、生活習慣、体質的な要素、家族性が強いです。病気の程度により無治療、内服、インスリン注射の治療があります。年齢分布は学童期以降、性差はありません。成人期にくらべて小児では発症が少ないですが、近年では食事の欧米化や運動量の減少により発症は増えているといわれています。
症状
短期間では無症状ですが、高血糖が長期にわたると、のどが渇く、多飲、多尿、疲れやすいなどの症状があらわれます。とくに1型糖尿病は2型糖尿病とくらべてインスリンの分泌が少なく3ヶ月くらいで急速に症状が進行するため、上記の症状以外にケトアシドーシス(代謝が悪くなり血中のケトン値が上がる)でみつかることがあり、2型糖尿病よりも症状が強くでます。さらに進行すると体重減少や意識障害をおこすこともあります。しかし学校検尿で早期に発見されれば無症状のことも多いです。
診断
血糖、HbA1c(過去1ヶ月間の平均血糖を表します)で糖尿病を診断します。その他、ケトン、血液ガスでアシドーシス(体に酸性に傾いているか)の有無を確認します。
1型糖尿病
自己免疫が原因のことが多いので、インスリン分泌臓器である膵臓と関係する抗体価が陽性となることが多く、採血で確認します。その他インスリン分泌の状態を表すC-ペプチド:CPRの採血、尿検査を行います。
2型糖尿病
患児の肥満の有無、糖尿病・肥満や高血圧・高脂血症の家族歴を確認します。ご本人に肥満などがあれば肝機能や脂質の検査も行います。
1度の血糖、HbA1cで糖尿病の診断がはっきりしない場合は経口血糖負荷試験を行うこともあります。
合併症
①神経障害:四肢のしびれ・感覚が鈍くなる、起立性低血圧
②網膜症:糖尿病による網膜症は成人の失明原因として2位
③腎症:①,②よりも遅れて発症する
いずれも小児期は極稀ですが、血糖コントロールが長期にわたって不良な場合、成人期に発症することがあるので注意が必要です。
治療
1型糖尿病
膵臓から分泌されるインスリンが少ない(いずれ消失する)ので、インスリン注射の絶対適応になります。目標HbA1c7.5 %です。成人ではペン型のインスリン注射が主ですが、小児では体重が少なく食事のムラも多いのでより細かいインスリン注射が必要になります。インスリンポンプであれば、生活にあった細かいインスリンの調節が可能です。インスリン補充さえしっかりしていれば、食事・運動制限なく、今までと変わりない生活を送ることができます。
2型糖尿病
基本は食事運動療法(生活習慣の改善)です。ただし病気の発症時は膵臓がだしているインスリンが効きにくい(血糖がさがりにくい)状態なので、一時的にインスリンを使用することもあります。膵臓の状態がよくなるとインスリンは不要になるので、内服治療や食事運動療法でコントロールします。