若年性特発性関節炎(全身型)
若年性特発性関節炎(juvenile idiopathic arthritis: JIA)は国際リウマチ学会の分類では以下の7つに分類されます。
① 全身型
② 少関節炎
③ RF陰性多関節炎
④ RF陽性多関節炎
⑤ 乾癬性関節炎
⑥ 付着部炎関連関節炎
⑦ 未分類関節炎
ここではJIAの中でも頻度の高い①全身型JIAについて説明します
特徴
JIAは16歳未満に発症し6週間以上持続する原因不明の関節炎とされます。
以前は若年性慢性関節炎(juvenile chronic arthritis: JCA),若年性関節リウマチ(juvenile rheumatoid arthritis: JRA)などと呼ばれていましたが,現在は「若年性特発性関節炎(JIA)」という病名でほぼ統一されています。
原因
私たちの免疫システムには自然免疫と獲得免疫があります。自然免疫とは,外部から侵入した病原体などに対して好中球やマクロファージなどの細胞が直接退治し,また病原体を感知してサイトカインと呼ばれる警報を出すシステムです。
全身型JIAは,この自然免疫の異常を背景とし,全身の炎症を起こす自己炎症性疾患と考えられています。
疫学
日本でのJIAは小児10万人あたり10-15人であり,全身型JIAはその中でも40%程度とされています。
症状
発熱と,発熱時にみられるリウマトイド疹(ピンク色の皮疹),関節炎が主な症状です。
関節炎は発症早期には認めないこともあります。
肝脾腫(肝臓や脾臓がはれる),リンパ節腫脹,咽頭の痛みなどが起きることがあります。
まれにマクロファージ活性化症候群(MAS)が起こります。MASとはマクロファージやリンパ球が過剰に働き,血球(白血球,赤血球,血小板)を破壊する血球貪食症候群のひとつです。MASでは強烈な高サイトカイン血症によって急速に多臓器の障害を起こすため迅速な対応が求められます。
検査
血液検査
炎症を反映する項目(白血球・CRP・赤沈・血清アミロイドAなど)の数値が高くなります。また関節炎があると,関節炎のマーカーであるMMP3の数値が高くなります。
診断
発熱時にみられるリウマトイド疹,関節炎を確認することが大切です。
JIA全体に言えることですが,正確に診断するための一律の基準は存在しません。症状や検査結果が全身型JIAに特徴的であることや,他の病気によるものではないことなどから総合的に診断されます。
治療
寛解導入療法では急性期の炎症を抑えること,後療法では抑えた炎症を再燃させないことを目標にします。
寛解導入療法では,非ステロイド性抗炎症薬の内服,ステロイドの点滴で炎症を抑え,後療法ではステロイドの内服を継続します。
ステロイドを減らす過程で症状が再燃する場合などには,特定のサイトカインの働きを抑えるために生物学的製剤であるトシリズマブを使用することもあります。