若年性皮膚筋炎
16歳未満に発症した筋肉の炎症を主な症状とする病気の総称を若年性特発性炎症性筋疾患(juvenile idiopathic inflammatory myopathy: JIIM)といいます。若年性皮膚筋炎(juvenile dermatomyositis: JDM)はJIIMの中で最も多い病気です。
特徴
JDMは主に血管内皮障害により、主に筋力の低下と特徴的な皮膚症状を起こす病気です。
原因
遺伝的要因(生まれつきの体質)を背景に環境要因(感染症、紫外線、薬剤など)が関与するといわれています。皮膚や筋肉の小血管で炎症が起こり、皮膚炎や筋炎が生じます
疫学
日本では小児10万人あたり7人程度と言われています。
症状
JDMでは、主に筋肉と皮膚に症状が出ます。
筋症状
身体の中心や、中心に近い手足の筋力が落ち、筋肉の痛みを伴うことがあります。症状が進むと歩くことや飲み込むこと、起き上がることが困難になります。
皮膚症状
ヘリオトロープ疹
上まぶたに赤紫色の皮疹が出ます。白色人種ではこの皮疹の色がヘリオトロープという花の色に似ていることからこのように呼ばれますが、日本人ではやや紫を帯びた暗い赤色であることが多いことが特徴です。
ゴットロン徴候
肘、膝の関節に紅斑(赤い皮疹)が起きます。
ゴットロン丘疹
指の関節に、盛り上がりのある丘疹を伴うことがあります。
頬部紅斑
両頬の紅斑(赤い皮疹)が見られます。
その他
間質性肺炎や消化管潰瘍・出血、不整脈などの心電図異常、心筋障害・心膜炎、関節炎などを認めることがあります
検査
血液検査
多くの場合、筋原性酵素と呼ばれる筋肉に含まれる酵素(CK、ALD、AST、LDH)の値が高くなります。また、筋炎特異的自己抗体と呼ばれる抗体(抗ARS抗体、抗Jo-1抗体、抗MDA5抗体、抗TIF抗体、抗Mi-2抗体など)の値が高くなることがあります。
MRI検査
力の入りにくい筋肉では筋炎を示す所見を認めます。
筋生検
筋肉の線維の変性、炎症細胞が増えている所見などを認めます。
診断
「小児慢性特定疾病事業における診断の手引き(2018年)」をもとに、症状、検査所見を踏まえ診断します。
治療
症状、重症度に応じ、ステロイドの内服や点滴、免疫抑制剤が使用されます。
ステロイドを長期に多く使用すると、骨密度が低下し成長障害(身長が伸びにくくなる)が起きることがあります。成長過程にある小児では、急性期の炎症を抑えた後はできるかぎりステロイドを減量するために免疫抑制剤を併用するなど工夫がされます。