周期性発熱・アフタ性口内炎・咽頭炎・リンパ節炎症候群(PFAPA症候群)
周期性発熱・アフタ性口内炎・咽頭炎・リンパ節炎症候群(periodic fever, aphthous, stomatitis, pharyngitis and cervical adenitis syndrome : PFAPA症候群)は周期的な発熱に加え、口内炎、咽頭炎、頸部リンパ節腫脹を起こす病気です。
特徴
- 自己炎症性疾患の中では最も多いと考えられています。
- 多くは5歳未満で発症し、10歳頃までには自然に軽快(発熱しなくなる)すると考えられています。
原因
- 私たちの免疫システムには自然免疫と獲得免疫があります。自然免疫とは、外部から侵入した病原体などに対して好中球やマクロファージなどの細胞が直接退治し、また病原体を感知してサイトカインと呼ばれる警報を出すシステムです。この自然免疫が適切に作用せず、自然に炎症が起こる病気を自己炎症性疾患と呼びます。
- PFAPA症候群はこの自己炎症性疾患の一つであり、扁桃腺での微生物が関係している可能性が考えられています。
疫学
ノルウェーでは5歳以下の小児1万人に2人程度と報告されていますが、日本での具体的な患者さんの数はまだ把握されていません。周期性発熱症候群(発熱を繰り返す病気の総称)の中では最も多いと考えられています。
症状
3-6日程度続く発熱が3-8週間ごとに周期的におきます。
また発熱時に以下の①から③の症状を認めます。
① アフタ性口内炎:舌や頬の粘膜に白い口内炎ができます。
② 頸部リンパ節炎:首のリンパ節が腫れて、痛みを伴います。
③ 咽頭炎:のどが赤くなり、扁桃腺が腫れて白苔(白い膜)が付きます。
④ その他、腹痛などがみられることもあります。
発熱時に①から③の症状がすべてそろう場合とそろわない場合があります。発熱していない時には症状はありません。また、感染症ではないため一般的に咳や鼻水はありません
検査
血液検査
炎症を反映する多くの項目(白血球、CRP、血清アミロイドA)の数値が高くなります。同じ炎症を反映するプロカルシトニンの値は正常か軽度の上昇にとどまる点がPFAPA症候群の特徴です。
診断
- 古くからThomas基準と呼ばれる診断基準が用いられてきました。しかし、この基準ではPFAPA症候群以外の病気もPFAPA症候群と認識されてしまう可能性が高いのが難点でした。
- 近年、小児リウマチ国際研究機関からPFAPA症候群の分類基準、日本からは診断基準が提唱されました。これらの基準を元に、その他の自己炎症性疾患、自己免疫性疾患などでないことから総合的に診断されます。
- また、最初はPFAPA症候群と診断されても、経過をみている中で他の病気と診断される場合がまれになるので注意が必要です。
治療
PFAPAの治療は大きく3つに分かれます。予防、発熱時の治療、根本的な治療の3つです。
予防
発熱の期間を短く、発熱の頻度を下げるために一般的に使われる内服薬が2つあります。シメチジンとロイコトリエン受容体拮抗薬です。
シメチジン
もともと胃薬として使われてきましたが、PFAPAの発作を抑える作用がわかり、現在では最初に使われることが多い薬です。シメチジンを内服すると3割の患者さんで発熱の期間、頻度がよくなったと報告されています。
ロイコトリエン受容体拮抗薬
気管支ぜんそくやアレルギー性鼻炎に使われている薬です。ロイコトリエン受容体拮抗薬の内服が有効とする報告があります。
発熱時の治療
発熱時にはステロイドを内服すると、速やかに解熱します。これはPFAPA症候群の特徴のひとつであり、発熱時にステロイドを内服して速やかに解熱することを診断の根拠の一つとすることもあります。
根本的な治療
現時点で最も発熱発作に有効な治療は扁桃摘出術(手術で扁桃腺をとる)です。この方法では7-9割の患者さんが発熱しなくなるといわれていますが、逆に考えると1-3割の患者さんには効果がありません。手術は全身麻酔で行う必要があり、少なからず体への負担が生じるため、慎重に検討します。
経過
成長と共に発熱の頻度は下がり、多くは10歳頃までに後遺症なく自然に治るといわれています。