大腸がん
大腸癌は、大腸に発生する癌で、腺腫という良性のポリープが癌化して発生するものと、正常な粘膜から直接発生するものがあります。食生活の欧米化や運動不足といった生活習慣の変化に伴い、日本での大腸癌の罹患率と死亡率は増加しており、2019年の部位別がん死亡者数において男性では3位、女性では1位となっています。
特徴
- 男性に多く
- 好発年齢は50歳以上
- 大腸は結腸と直腸に区分されますが、癌は肛門側の直腸やS状結腸のほか、小腸側の上行結腸に発生頻度が高いとされています。
- 近年は薬物療法が飛躍的な進化を遂げ、進行がんに対しての治療成績は向上しています。また、高度進行がんでみられる肝転移に対しても外科的切除によって生命予後の改善が期待できます。
症状
早期がんではほぼ無症状ですが、病変部位が肛門に近い場合は便が細くなったり、便秘や下血、慢性的な下痢症状を訴えることがあります。貧血の原因精査で見つかることもあります。
進行して腫瘍が大きくなると腸管内腔が閉塞し、腹部膨満、悪心、嘔吐が出現することもあります。
診断
便潜血検査
便を提出し、便中に血液が混ざっているかを検査します。
大腸内視鏡検査
肛門から内視鏡を挿入し、病変部の位置や形態、生検検査を行います。
注腸造影検査
肛門からバリウムと空気を注入して行うX線検査です。必要と判断した場合に行います。
CT, MRI, PET-CT
臓器やリンパ節転移の有無を調べたり、治療効果の判定などにも使われます。
病期分類
以下のT N Mによって進行度の低いものからStage 0~IV期に分類されます。
T 壁深達度
大腸内腔の粘膜側から発生したがんは、深さによりTis~4に分類されます。
Nリンパ節転移
大腸周囲の血管に沿って存在するリンパ節の個数によってN0~2に分類されます。リンパ節転移の確率はT1で10%、T2で20~25%, T3, 4で50%程度。
M遠隔転移
大腸以外の他臓器転移の有無によってM0~1に分類されます。M1はStage IV期に分類されます。
治療
基本的に病期によって治療方法を決定します。Stage 0とStage Iの一部は内視鏡的切除を、 Stage IとIIには原則として手術単独、Stage IIの一部とStage III、Stage IVに対しては手術と薬物療法、ときに放射線療法を組み合わせて行います。
内視鏡的切除
肛門から挿入した内視鏡を用いて腸管内腔から腫瘍を切除します。癌の壁深達度が浅く、粘膜内(Tis)と粘膜下層(T1)の経度浸潤までの病変に対して行われます。ただし、切除した腫瘍の組織学的検索結果によっては外科的な追加手術が必要となることがあります。
手術
癌の原発部位とその周囲のリンパ節を摘出する根治的手術が基本です。当院では開腹手術に比べ、きず(創)が小さく手術後の痛みも軽く、回復が早いといわれている腹腔鏡手術を積極的に取り入れています。
薬物療法
Stage IIの一部とStage IIIに対しては根治的手術の後に、再発予防として抗癌剤投与を行うことが推奨されています。切除不能な進行、再発癌の場合は抗癌剤に分子標的薬を加えた薬物投与を行います。検査によって有効性が期待される場合には免疫チェックポイント阻害薬の投与も行います。
放射線治療
直腸癌に対して腫瘍縮小効果を目的として用いられていて、化学療法との併用で手術後に原発部周囲の局所再発率を下げることが示されています。当院では局所再発リスクが高い直腸癌に対しては術前に化学放射線療法を施行後に手術を行っています。