がんの手術後の再建外科
癌(がん)や肉腫(にくしゅ)などの悪性腫瘍を切除した後、皮膚皮下組織、筋肉や骨に大きな欠損を生じた場合には、機能や外観に問題を生じます。そこで自分の皮膚、筋肉や骨などの一部を移植して、欠損した部分を治療する外科を「(形成)再建外科」と言います。
対象となる疾患
形成外科だけでなく、皮膚科、耳鼻咽喉科、歯科口腔外科、整形外科、消化器外科などの他科の医師と協力して手術を行います。
再建方法
再建方法は大きく分けると
- 欠損部に皮膚を移植する方法
- 欠損部分に近接する周囲の組織を移動する方法
- 欠損部分から離れた組織を移動する方法
があります。
欠損部分に皮膚を移植する方法
欠損部分に体の他の部位から皮膚を移植する方法です。皮膚移植や植皮と呼ばれます。移植する皮膚は、足の付け根や太もも、背中などから採取するのが一般的です。植皮が安定するまでの1週間程度は、創部を安静に保つ必要があります。欠損部分の状態によっては、以下の方法が必要になります。
欠損部に近接する周囲の組織を移動する方法
切除された周囲の皮膚や筋肉をスライドさせたり、回転したりして移動させ、切除部分を再建します。
欠損部分から離れた組織を移動する方法
組織を体から切り離して移植するため、遊離組織移植法(遊離皮弁術)と呼ばれます。移動する組織は血流が必要であり、移植組織の血管と欠損部分の血管を顕微鏡下に吻合して血流を再開します。代表的な移植組織の採取部分は前腕、腹部、大腿部、背部です。組織を採取した部分は、直接縫合あるいは皮膚移植を行い閉じます。
癌や肉腫の再建方法は、一人一人の病状で異なっており、他科の医師と検討しながら、適切な再建法を選択します。
合併症
血腫(血がたまること)、漿液腫(リンパ液がたまること)、感染(化膿すること)、縫合部分の離開(キズが開くこと)、移植組織の壊死(部分的、全部)が挙げられます。もし合併症が発生した場合には適切な処置を行って対処します。合併症の中で最も問題になるのは、移植組織の壊死です。遊離組織移植法(遊離皮弁術)の場合、吻合した血管に血栓を生じると血管が閉塞し、血流が途絶えて、組織は壊死に陥ります。そのため、血管が閉塞した場合は緊急で再手術が必要となります。血栓を取り除き、血管を再吻合することで移植組織を救済します。それでも壊死になった場合は、他の移植術を用いて治療を行います。(当科での遊離組織移植の生着率は約97%です。)