理念
基本方針
- 本院は,公共的医療を行う施設であり,“病者のための医療”をめざし,病者の満足が得られるように努力する
- 本院は,愛と責任を基幹とし,病者の権利および生命の尊厳を遵守して,倫理的医療を提供する
- 本院は,特定機能病院として,高度で先進的な医療を提供するとともに,医療水準の向上・安全管理に努める
- 本院は,大学付属病院として,各地域医療に貢献できる“よき臨床医の育成”に努める
- 本院は,他の医療機関との緊密な連携により,人々の健康と幸福につながる効果的な医療に努める
患者さんの権利
当院は世界医師会による患者さんの権利に関するリスボン宣言を遵守致します。 リスボン宣言での前文では,
- 医師をはじめとして医療に従事する者・機関は患者さんの権利を認容し擁護する共同の責任がある
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行政,司法あるいはその他の機関・組織が患者さんの権利を否定,侵犯する場合,医療機関(医師)は患者さんの権利の保証または回復のための適切な手段を講じなければならない
(ただし,本規定は独裁国家などにおいて国家の制度による患者さんの権利の侵犯などに対して医師は法律・制度に縛られずに患者さんの権利を優先させることを示しています。ただし,我が国においてはこうした社会状況にはないと当院では判断しています) - 医学の進歩のための研究(臨床研究・臨床試験)でも,患者さんは参加の有無に拘わらず適切な医療を受ける権利を有することを医療機関は担保する
その上で患者の権利として以下のことを挙げています。
1. 良質な医療を受ける権利
- 治療法の選択を自分の意思に従って選択する権利を有し,かつ医療機関から治療を受ける権利
- 治療選択は医学的妥当性に沿い,患者さんにとって最善のものである権利
- 医療の質の保証のもとでの医療をうける権利
- 治療法の選択に関して,患者さんは公平な選択手続きに基づいて行われる権利
- 患者さんは,継続して妥当性のある医療を受ける権利
2. 医療機関選択の自由
患者さんは,医療機関を自由に選択できる。
3. 自己決定権
- 患者さんは,医療機関から適切な情報提供を受け,自ら治療方針を決定できる権利を有する
- 患者さんは,検査,治療法について目的,結果に関する説明を受ける権利を有する。患者さんは,説明のあと治療法を拒否することの権利を有する
- 患者さんは,臨床試験に参加しない権利を有し,参加しない場合でも不利益を蒙らないことを担保する制度でのもとで医療を受ける権利を有する
4. 意識喪失者
- 意識喪失を含めて意思表示ができない患者さんでも,患者さんの代理人の資格を有する者に対するインフォームドコンセントの権利を有する
- 患者さんが治療に対する明確な意思表示をしていない限り,緊急時の対応について医療機関は患者さんにとって最善の治療を行う義務がある
- 自殺企図者に対する治療のためには医療機関は救命を最優先に対応する
5. 法的無能力者
- 未成年者を含めて法的無能力者の治療に際しては法定代理人の同意を得た上で治療を行う
- 法定無能力者であっても意思表示が可能な場合は治療法の選択・決定に参加する権利を有する
6. 患者さんの意思に反する処置・治療
患者さんの意思に反する治療は法律・医の倫理に合致する場合を除いて,患者さんは拒否する権利を有する。
7. 情報に関する権利
- 患者さんは,自己の病歴について情報公開と説明を求めることができる。医療機関は患者情報を第三者に提供してはならない
- 患者さんの生命または健康に重篤な影響を与える判断された場合,医療機関は患者さんに情報提供を行わないことができる
- 患者さんは,第三者の生命の危機に関係しない限り,自己の情報を知らされずにいる権利を有する
- 患者さんは,情報開示を受ける代理人を自己の意思で選択する権利を有する
8. 秘密保持に関する権利
- 患者さんは,自己の情報を死後も守られる権利を有する。ただし,ご家族が生命の危機にある場合には患者さんの死後であっても,ご家族は故人の情報を知ることができる
- 患者さん情報の開示は患者さんの承諾または法律で規定されている場合に限定される。ただし,医療関係者間での個人情報の共有は医療業務遂行に必要な内容に限り許容される
- 患者さんが特定できる標本などの資料も個人情報として保護される権利を患者さんは有する
9. 健康教育を受ける権利
患者さんは,自己の治療法選択,治療を決定するのに必要な健康教育を受ける権利を有し,医療機関は健康教育に積極的に関与する義務を有する。
10. 尊厳性の権利
- 患者さんは,尊厳およびプライバシーに関して尊重される権利を有する
- 患者さんは,医学的合理性のもとに苦痛から救済される権利を有する
- 患者さんは,ターミナルケアを受ける権利を有し,看取り医療においてもあらゆる可能な支援を受ける権利を有する
11. 宗教的支援を受ける権利
患者さんは,宗教的支援を受ける権利および拒否する権利を有する。 ただし,当院においては医学的妥当性および必要性に基づいた救命および治療を優先させます。
12. 子供の権利
こどもに関 しては,国際連合条約 「 児童 の 権利 に 関 する 条約 」の 基本理念 に 則 り,すべてのこどもの 基本的人権 を 擁護 し, 心身 の 健全 な 育成 を 援助 するよう 最大限 努力 する。 検査 や 治療 についてこどもの 成熟度 や 年齢 に 相応 な 説明 を 行 い,こども 自身 が 自己 の 意見 を 述 べる 権利 を 確保 する。 一方 で,こどものアドボケイトという 視点 を 活 かした 臨床 を 心 がけ, 適切 な 援助 と 保護 を 行 う。
13. 宗教的理由等による輸血拒否に関する当院の方針
日本大学医学部附属板橋病院は,患者さんの生命保護とご希望を最優先して診療にあたっており,輸血を含んだ標準的医療の提供を前提とした診療を行っております。基本的には救命や生命維持にとって必要であると医師が判断した場合に輸血を行う相対的無輸血※1にて対応しますので,当院では,無輸血治療に関するご希望に沿えない場合がございます。絶対的無輸血※2,無輸血治療を希望される方には,他の医療施設を選択していただくよう転院をおすすめしています。
※1相対的無輸血:輸血が生命の維持に必要な場合には輸血を行う。ご本人の意志を尊重して可能な限り無輸血治療に努力するが,輸血以外に救命手段がない事態に至った時には輸血を行うという立場・考え方。
※2絶対的無輸血:いかなる場合も輸血を施行せず,たとえ輸血により救命できる可能性があっても輸血を施行しない。ご本人の意志を尊重し,たとえいかなる事態になっても輸血をしないという立場・考え方。
職業倫理
日本大学医学部附属板橋病院に勤務するすべての職員が遵守すべき規範を以下に定める。
- 大学が定める諸規定を遵守すること
- 医療を実践するに必要な法令の遵守と知識,徳育の研鑽に努めること
- 患者の健康の増進,患者の権利の擁護に最善を尽くすこと
臨床における倫理
- 生命の尊厳に最大の敬意を尽くす
- 患者の健康の増進,患者の権利の擁護に最善を尽くす
- 適切な知識に基づく医療の実践と医療の発展に尽くす
- 医療安全と医療連携の実践に努める
患者・医療者間のパートナーシップ
生命の尊厳と最善の医療の実践を図るために以下の各項を遵守する。
- 医療の実践に際しての礼節の保持
- 適切な説明と同意に基づく医療の実践
- 最善の結果を得るための患者・家族ならびに医療者間の協力
- 正確な医療記録と情報開示
- 最善の医療のための関係者間での適切な情報の共有
説明と同意
患者の納得の得られる医療を実践するために診療にあたり,以下の事項に関する説明を行い,同意を得ることとする。
- 病名,病状の本人への説明(本人,家族の希望する最も適切な説明方法に従う)
- 診療,治療の目的とその選択理由(効果,不利益)
- 代替診療,治療について(現状の場合の予後,他の診療・治療法(緩和,保存療法など)での利益,不利益)
- 緊急時の処置方法
- 説明者と被説明者に関する情報