がん情報サービス 『がん診療連携拠点病院等 院内がん登録生存率集計報告書(2013-2014)』 における本院のコメントについて
病院から
国立がん研究センター「がん情報サービス」に公表された「院内がん登録生存率集計報告書
(2013-2014)」の施設別集計値における本院のコメントは以下のように掲載しております。
国立がん研究センター「がん情報サービス」の院内がん登録生存率集計報告書のURL
https://ganjoho.jp/public/qa_links/report/hosp_c/hosp_c_reg_surv/index.html
以下,本院のコメント
〇 はじめに
当病院のがん診療においては,高度な医療を提供する大学病院としての役割を担うとともに地域の基幹病院として,がんだけでなくその他の基礎疾患を有する患者さんを多く診察治療し地域医療を担っているという側面もあります。ご高齢であっても、並存疾患を有している患者さんであっても,その他全身状態の状況等においてがん診療専門病院では対応できないがん患者さんに対しても積極的かつ包括的に診療を行っています。
〇 当病院の患者属性の特徴について
まず年齢構成割合において,0-14歳(全国集計値(以下「全国」):0.3%,当病院集計値(以下「当院」):1.0%),15歳-39歳(全国:3.0%,当院:4.7%)となっており,小児がん(0-14歳),AYA世代がん(0-39歳)で全国より年齢構成割合が高く,当院では小児がんAYA世代がんの診療を積極的に行っていることが示唆される。
一方,80歳以上(全体:18.7%,当院:16.0%)の割合は,全国より低いものの,病期分類(ステージ)別の構成割合では,5大がんの多くで病期が進行した症例の割合が多く,特にIV期の構成割合はそれぞれ,胃癌(全国:16.2%,当院:17.1%),大腸癌(全国:19.5%,当院:27.6%),肝細胞癌(全国:7.3%,当院:6.4%),非小細胞肺癌(全国:31.3%,当院:41.8%),女性乳癌(全国:5.8%,当院:6.8%)となっており,当院の特徴として,難治症例や進行症例を多く受け入れていることが示唆される。
〇 「生存状況把握」と「生存率」について
当院の当該期間症例の5年生存状況把握割合は98.9%であり,全国の98.1%とほぼ同様の結果であり,本調査開始時から国際的に望ましいとされる95%を継続的に上回っている。
当院において,死亡症例の約半数近く(40.0%)は住民票照会の結果として把握されていて,住民票照会では死因について,がん死かあるいは他病死かどうかの情報を得ることは出来ないため,「生存率」については,がん以外の疾患による影響にも留意する必要がある。
〇 各がん種の特徴について
・胃がん
胃がんについて,全国での手術実施割合が79.3%に対して,当院では71.3%と低い結果となっている。胃がんではIV期でも手術適応症例となる場合があり,ステージごとの症例数での比較は難しいが,当院は手術不適応症例もしくは手術困難なリスクの高い症例が多いことが示唆される。
なお,手術実施症例で「治癒切除」となった割合では,全国:94.1%,当院:92.3%と遜色ない結果となり,手術適応症例については適切に手術が実施されていることが示唆される。
・大腸がん
大腸がんについて,ステージごとの症例数において,全国と比較してIV期の割合が多く,III期の割合が少なくなっている。(III期:全国=26.2%,当院=19.5%,IV期:全国=19.5%,当院=27.6%)
大腸がんのIV期が多いことについて,当院では「大腸がん肝転移」の症例数及び肝転移に対する手術症例が多く,IV期を除いたI期・II期・III期のみの症例(193症例)では,手術実施割合は90.7%,手術実施症例で「治癒切除」となった割合は98.9%の結果となっている。
・肝細胞がん
全国ではすべてのがんのうち,「肝臓がん」は全体で6番目に症例数が多いがんで,がん全体の症例数の約4%ほどを占めているが,当院での肝細胞癌の症例数は,全体の3番目,約7.5%を占めており,肝細胞癌の診療を数多く行っていることを示している。
特に手術実施症例の割合については,全国:27.2%に対して,当院:63.3%となっており,当院の肝細胞癌の診療の特徴を示している。
・非小細胞肺がん
非小細胞肺がんについて,ステージごとの症例数の割合が,全国では,I期・II期合計:50.4%,IV期:31.3%に対して手術実施症例の割合は48.1%で,手術適応症例とされるI期・II期の合計と手術実施症例の割合が近い値にある。(50.4%-48.1%)
一方で,当院ではI期・II期合計:38.4%,IV期:41.8%とIV期の症例数の割合が多いことに加え,当院の手術実施症例の割合は25.8%で,手術適応症例とされるI期・II期の合計(38.3%)を大きく下回り,I期・II期の診断でも手術不適応症例もしくは手術困難なリスクの高い症例が多いことが示唆される。
・女性乳がん
女性乳がんについて,各ステージごとの症例数の割合,手術実施症例の割合,手術実施症例における「治癒切除」の割合,いずれにおいても全国集計値とほぼ同じ結果を示している。
〇 観血的治療(手術,内視鏡手術)実施症例における「治癒切除」症例について
手術を実施した際の結果を「治癒切除」・「非治癒切除」に分けた場合の「治癒切除」の割合は5大がんそれぞれにおいて全国集計値と遜色ない結果で,手術適応症例については,適切に手術が実施されていることが示唆される結果となっている。
〇 さいごに
当病院では,今後も患者さんの症状,状態,治療方針等の意見交換を行い,最新のがん治療と患者さんに最適な治療を提供できるよう日々努力してまいります。
当病院の治療実績や治療内容,治療方針等についてお知りになりたいことがございましたら,お気軽に担当医にご相談ください。