「腫瘍循環器外来」を開設いたしました
小児科・新生児科
全国に先駆けて『腫瘍循環器外来』を開設しました。小児を含むがん患者の治療成績の向上により長期生存者(サバイバー)が増加しています。この結果,心血管系に関する遅発性の障害が重大な問題として認識されてきました。近年の新しいタイプの抗がん剤(分子標的薬)も従来とは異なった心血管系の副作用を持つことが報告されています。循環器内科・小児科が連携し,小児と成人を対象にがん患者の治療中に起こる心血管系合併症の診断・治療と循環器疾患を抱えた患者のがん治療のサポートを包括的に行います。
背景
小児・成人のがんの治療では従来からシクロフォスファミドやアントラサイクリン系の薬剤,放射線治療が多くの方に使われてきました。これらの薬剤の累積投与量が増加するに伴い,心機能障害が若年であっても重篤化することがわかってきました。一方,小児を含むがん患者の寛解生存率の向上により長期生存者(サバイバー)が増加しています。この結果,心血管系に関する遅発性の障害が重大な問題として認識されています。また高齢者のがんサバイバーは循環器系疾患で死亡することが半数以上を占めています。近年,新しいタイプの抗がん剤が使用され始めていますが,従来とは異なった心血管系の副作用も報告されています。既に欧米諸国では,循環器内科の専門領域として腫瘍循環器科が確立されていますが,わが国ではその取り組みは始まったばかりです。
開設の目的
現在,本邦のがん診療連携拠点病院での循環器疾患への対応は循環器医の不足により極めて限定されています。一方大学病院としての地域がん診療連携拠点では複数科の連携が取れるため新たな診療体制を構築しやすい土壌と言えます。そこで,当病院では診療科の垣根を越えて従来から行われている心機能評価指標に加え,2次元及び3次元心エコー法を用いた左室心筋の歪み(左室ストレイン)検査のがん治療を行なったすべてのサバイバーに拡大します。このストレインを使用した心機能評価法はすでに成人がんサバイバー例の無症候性心筋障害の早期検出に有用であることが欧米での前向き検討で報告されガイドライン化されていますが,本邦での報告はわずかです。さらに外部の施設で治療を受け,この領域の専門診療を希望するサバイバーにも広く対応いたします。
特色
小児科と循環器科が協力し,小児期からAYA世代,成人期までの包括した腫瘍循環器外来は本邦初です。また当病院の心機能検査は従来型の2次元心エコー法検査に加え,最先端の3次元心エコー法による左室ストレイン計測を世界基準に満たした装置で解析し,より精度の高い心機能評価を行っている点も特筆すべきものです。
診療内容
がん患者の治療中に起こる心血管系合併症の診断治療と循環器疾患を抱えた患者のがん治療のサポートを包括的に行います。
- がん治療前の心機能評価
- 治療中に出現した心血管疾患の診断と管理
- サバイバーの長期フォローアップ
- 心臓病を有する患者さんでは,治療による心臓病増悪のリスク評価と管理
- 患者に還元できる臨床研究
診療体制
完全予約制です。
循環器科外来(内線 3110)もしくは小児科外来(内線 3131)にご連絡ください。