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肺がん

肺がんについて

概要

肺がんとは,肺の気管・気管支・肺胞の一部の細胞が何らかの原因でがん化したものです。肺がんは進行するにつれて周囲の組織を破壊しながら増殖し,血液やリンパの流れに乗って拡がっていきます。

厚生労働省人口動態統計によると,2017年のがん患者数は約178万人で,その内に肺がんは約17万人います。また,がんによる死亡者数は約37万人ですが,その中で肺がんは最も多く約7万人となっています。

原因

肺がんのリスク要因を考える上で,喫煙習慣を切り離して考えることはできません。欧米では,喫煙者の肺がんリスクは,非喫煙者の20倍以上とされていますが,日本人を対象とした研究(2008年)では,喫煙者の肺がんリスクは男性で4.8倍,女性で3.9倍という結果でした。また,喫煙による発がんリスクの大きさは,同じタバコを吸う人でも遺伝子素因で変わる可能性が指摘されました。他の遺伝的素因として,発がん物質の代謝経路にある酵素の活性などを決める遺伝子多型が,いくつか候補にあげられています。遺伝子関連の研究はまだ初期の段階にあり,根拠としては不十分です。環境要因としては,飲料水中のヒ素は確実なリスク要因です。その他,アスベスト,シリカ,クロム,コールタール,放射線,ディーゼル排ガス等への職業や一般環境での曝露,さらに,石炭ストーブの燃焼や不純物の混ざった植物油の高温調理により生じる煙,ラドンなどによる室内環境汚染も,肺がんのリスク要因とされています。

分類

検査や手術で採取したがんの細胞や組織を顕微鏡で調べると,細胞やその集団の形に違いがあり,いくつかの種類に分類することができます。これを組織型と呼び,大きく「小細胞肺がん」と「非小細胞肺がん」にわけることができ,非小細胞肺がんはさらに「腺がん」「扁平上皮がん」「大細胞がん」などにわけることができます。

症状

初期の段階では,通常肺がんの症状はありません。また,肺がんの初期症状が現れたとしても,程度が軽く,非典型的であることが多いです。その中で,比較的に咳と血痰は肺がんの初期症状と言えるかもしれません。

持続性の咳があり2〜3週間続くことがあります。また,喫煙や慢性気管支炎,COPD,肺結核などによって既に長期の咳が出ている人は,がんを伴うと咳が悪化していきます。肺がんの咳の特徴は,甲高い金属音のような閉塞性の咳であることが多いとされますが違うこともあります。

痰に糸状の血や血の塊が混じること,少し赤い色の痰,少量の喀血など起こることがあります。肺がんでは大量の喀血はまれです。

また,胸の圧迫感・息切れ・呼吸困難などがあります。患者の2%が喘鳴に苦しんでいます。

肺がんが進行すると,胸痛,声枯れ,顔のむくみ,疲労感など様々な症状が出現してきます。

診断

肺がんの疑いがあるかどうかをレントゲンやCTで検査します。それで疑いがある場合は,確定診断のために気管支内視鏡検査や針生検などで細胞/組織を採取します。

内視鏡検査

気管支鏡検査

気管支鏡検査とは,気管支に細くて軟かい内視鏡を口や鼻から挿入し,気管支の中を観察したり,肺や気管支の組織,細胞や細菌をとって調べる検査です。

  • 利点

    局所麻酔で行えるため外来通院での検査が可能である。

  • 欠点

    組織採取のために出血,気胸,発熱などの症状が出ることがある。

気管支ファイバースコープ

ファイバーは細くてやわらかいため局所麻酔で行うことができます。

図 気管支鏡検査
写真提供:オリンパスメディカルシステムズ株式会社

経皮的肺生検

CTガイド生検

図 CTガイド生検断面・レントゲン

そして,確定診断が得られたなら,がんがどれくらい拡がっているか全身検索(PET検査など)を行い病期分類します。

PET:Positron Emission Tomography

18F-FDG(2-デオキシ-2-フルオロ-D-グルコース)

レントゲン

臨床病期

原発巣(T),リンパ節への移転(N),遠隔転移(M)のそれぞれの状況を確認後,それらを組み合わせることによって病期を判断する。

表 臨床病期

治療

肺がんの治療は,手術・放射線療法・薬物療法の組み合わせで行われます。

全身状態・組織型・臨床病期などを参考にして最適な治療法を決定します。

非小細胞がん

表 非小細胞がん

小細胞がん

表 小細胞がん

肺癌診療ガイドライン(日本肺癌学会編)より

薬物療法について

薬物療法には,抗がん剤・分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬などがあります。そして,どの薬剤が適しているかを決めるために,採取したがん細胞の遺伝子変異の有無や免疫療法の適合性などを調べることが必要になります。

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