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卵巣がん卵巣がん

卵巣がんについて

概要

卵巣がんは比較的稀ながんで,年間に約8000人の女性が発症します。様々な組織型があり,若年から高齢者の幅広い年代の方がかかりうる疾患です。症状が出にくい上に有効な検診もないため腹腔内にがん細胞が広がり進行した状態で発見されることが多く,手術だけではなく抗がん剤や分子標的療法薬など,複数の治療法を組み合わせた集学的治療が必要です。発見される時の症状としてはお腹の張った感じ(腹部膨満感)や腹痛などが見られます。

治療法

子宮や消化管と異なり,卵巣は腹腔内にあって体外と交通していないため手術をしない限り組織を採取することは出来ませんから,手術の前に確定診断することは不可能です。画像や血液検査で卵巣がんの可能性があると判断された場合には積極的に手術を行います。

1)手術
 基本的には開腹で行うことが推奨されています。術前に卵巣腫瘍の良悪性が判断できない場合は,術中に迅速病理診断を行います。卵巣がんでは両側の卵巣・卵管(子宮付属器)と子宮,大網(胃の下部から垂れ下がっている脂肪とリンパ組織で構成されている組織)の摘出が最低限行うべき術式(基本術式)で,病状に応じて腹部のリンパ節摘出(リンパ節郭清)を行います。がんが進行し手術での摘出が不可能であると予測された場合,当院では腹腔鏡手術で腹腔内のがん組織を採取して診断を確定した上で抗がん剤治療を先行する方法(審査腹腔鏡手術後のネオアジュバント療法)を採用しています。

2)がん薬物療法
 卵巣がんは腹膜転移(腹膜播種)を起こすことが多く,手術だけで治療を完了できる方は少ないです。60~70%の方では手術後に薬物治療が必要となり,抗がん剤治療(TC療法)を3〜4週ごとに6サイクルを目安に実施します。治療は薬剤師や専門看護師が常駐する外来化学療法室で行い,使用する薬剤の種類,投与量,副作用対策などについてがん薬物療法専門医,婦人科腫瘍専門医と薬剤師・看護師が連携して治療に当たります。

進行期や組織型など患者さんの病状によっては抗がん剤の効果を高めたり,治療後の再発を予防するために分子標的療法薬を追加します。近年,再発予防のために使用される分子標的療法薬として新薬であるPARP阻害薬が使用されるようになりました。PARP阻害薬はご本人にBRCAという遺伝子の変異があったり,卵巣がん組織が遺伝子の相同組み換え修復欠損(HRD)という特徴を持っている場合に有効性が高いことがわかっています。そのため事前に卵巣がん組織やご本人の血液を用いて遺伝子検査を行い使用の是非を判断します。遺伝子検査は患者さんの治療方針を決定するのに重要ですが,血縁者に影響しうる遺伝子変異が発覚する場合があります。当院では臨床遺伝専門医と婦人科腫瘍専門医がご本人とご家族に対し適切なケアを提供できるように協働しています。

教室スタッフ紹介リンク
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