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板橋病院の役割

当病院のがん治療における
強み

5大がんに関して

当病院では,豊富な症例数を生かして,標準治療はもとより臨床研究などを積極的に行っており,各診療ガイドラインを活用し,万遍なく治療を行える体制を整えております。

肺がん

肺がんについて,診断においては速やかに気管支鏡検査を行う体制が構築されており,クライオバイオプシーや超音波気管支鏡(EBUS-TBNA)等の先進的なデバイスにより高い診断率を維持しています。治療においてはがんゲノムパネル検査を積極的に行い,分子標的治療やがん免疫療法を多数行っています。
早期がんに対しては,患者さんに負担の少ない手術(出血,痛みの少ない低侵襲手術)を提供しています。また,合併症や高齢などで手術不能な患者さんには体幹部定位照射を行っており,全国でも症例数が多いです。
進行がんに対しては,呼吸器内科との協議の下,術前・術後の治療を施行しています。また,拡大手術に関しても,心臓血管外科,形成外科,整形外科等と合同手術を行っています。早期肺がんから進行肺がんまで幅広い医療を提供しています。

肝がん

全国的にも屈指の手術件数を誇り,近年腹腔鏡手術も導入し,体に侵襲が少ない治療を目指しています。
また,手術不能例に対する化学療法や肝動脈塞栓治療も総合的に外科で施行しており,こちらも全国的に屈指の治療件数となっており,集学的治療に長けています。ラジオ波焼灼術も積極的に行っているほか,ラジオ波焼灼術が部位的に難しい症例においては,定位放射線治療を行っており,症例数は年々増加しています。

胃がん・大腸がん

カンファレンスで治療方針を厳密に検討して,患者さんの予後と生活状況を鑑みて,エビデンスに基づいた適切な治療を選択しています。手術治療も腹腔鏡手術を適切に選択して,化学療法も組み合わせた積極的に予後を改善する治療を行っています。
また,現在ロボット手術の導入に向け施設認定の準備を行っています。外科的手術だけでなく,早期がんに対する内視鏡的治療も専門医により積極的に行っています。

がんゲノム医療

当病院は厚生労働省から認定されている全国188施設のがんゲノム医療連携病院の一つとしてがんゲノム医療中核拠点病院の東京大学医学部附属病院と連携しています。
がんゲノムプロファイリング検査(合計56,000点)の提出前と結果説明時に臨床遺伝専門医と認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングを全例行うことによって,遺伝性腫瘍遺伝カウンセリング加算(1,000点)を算定されています。施設によってはこれら遺伝カウンセリングを省略するところもありますが,当病院ではきちんとした患者さんに対する支援体制を整えています。がんゲノム医療によって適切な治療薬剤が見いだされた場合は,分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬をいち早く投与可能となっています。

5大がん以外の専門とするがんに関して

前立腺がん

手術療法としてはロボット支援手術が行われており,放射線療法として密封小線源療法,強度変調放射線治療が可能です。トピックになっている寡分割照射も予定し新しい治療への対応も十分に行っています。
また,PSA監視療法も積極的導入しています。さらに診療報酬改定に伴い,全ての泌尿器がんに対してロボット支援手術の対応が可能となっています。

白血病,リンパ腫,骨髄腫

血液内科では化学療法や造血細胞移植(自家または同種)を行っています。移植の認定施設として骨髄,末梢血,臍帯血などの全ての移植が可能です。
また,高齢者に多い骨髄腫は大学病院としては症例数が多いのが特徴です。

希少がん

希少がんの病理診断については,国立がんセンター,日本病理学会コンサルテーションシステムを利用して適正な診断を提供しています。また,小児がんについては,小児腫瘍中央診断や,小児病理専門医との連携を通じて適正な診断を提供しています。

原発不明がん,希少がん(血管肉腫など)

腫瘍内科ではがん薬物療法や緩和ケアまでに精通している腫瘍内科専門医が3名在籍しています。原発不明がんや希少がん(血管肉腫など)治療を行っています。
一般的ながんでも治療に難渋する症例が紹介されています。がんが多臓器に浸潤,転移している症例や治療方針が確立していない症例を対象に定期的に多診療科,多職種でカンファレンスを行いより良い治療方針を提供しています。
腫瘍内科外来は(月)午前,(木)午前に,がん薬物療法専門医が診察を行っており,がん薬物療法実施の患者に対するメディカルスタッフの指導(薬剤師外来・看護師外来)も実施しています。また,腫瘍センターとして診療科横断的な臨床研究を行っています。

婦人科がん(子宮頸がん,子宮体がん,卵巣がんなど)

予防から早期発見,前がん病変〜進行がんまでの治療とフォローアップまで一貫した医療を実施しています。妊孕性温存治療も積極的に行っており,特に子宮頸がんの広汎性頸部摘出術や子宮体がんの高用量黄体ホルモン療法を多く実施しており,女性ヘルスケアと生殖補助医療や周産期医療とシームレスに連携する医療を提供しています。

悪性骨腫瘍,悪性軟部腫瘍

原発性・転移性を問わず治療を行っています。小児症例に対しては小児科と連携し,化学療法と手術を行うことができます。

皮膚がん

手術療法の他,化学療法・放射線療法など集学的治療を行っています。広範囲切除例や切除後に整容的問題を有する症例は多診療科で連携して切除及び再建術を行っています。

頭頸部がん

頭頸部がんだけでなく,音声外科や耳管,めまい,難聴等,その他の耳鼻咽喉科領域にも専門の医師がいるため,様々な頭頸部がん治療に関連する合併症に的確に対応することができます。

医療体制について

がんゲノム医療連携病院として5大がん以外のがんも固形腫瘍についてがんゲノムプロファイリングの対象になっており,細密なフォローアップ体制を整えています。

小児科

当病院の小児科の血液腫瘍チームには,5名の日本血液学会認定専門医(うち2名は日本小児血液・がん学会認定専門医,うち1名はがん治療認定医)がおり,積極的に高度かつ最先端な抗がん治療を実施しています。小児がんは希少疾患ではありますが,がん診療拠点病院として機能する大学病院として小児がん患者を積極的に受け入れて診療を行っています。実際には,神経芽腫,腎芽腫,横紋筋肉腫などの固形腫瘍をはじめ,急性白血病などの血液悪性疾患も診療しています。

小児脳腫瘍に関しては,脳神経外科や放射線治療科と連携して集学的治療も可能で,実際に多くの脳腫瘍患者を受け入れています。また,当病院は移植認定施設で,小児科には日本造血・免疫細胞療法学会認定移植認定医(2名)もいるため,造血幹細胞移植治療も多く実施しており,再発性・難治性急性白血病などの治療も可能です。
さらに,あらゆる新規の化学療法も院内承認の上で積極的に施行し,例えば最近では神経芽腫に対するジヌツキシマブによる免疫療法を導入したり,再発性急性リンパ性白血病に対するブリナツモマブ治療では在宅投与を可能にしたり,様々な側面で最新の治療を取り入れています。当病院には小児外科,放射線治療部門が併設されており,小児固形腫瘍をはじめ血液腫瘍疾患に対する集学的治療が可能です。また精神科,麻酔科や緩和ケア・痛みセンターとも連携し,子どもサポートチームを発足して,患者のみならずご家族への全人的ケアを可能にしています。

当病院の小児外科には,日本小児外科学会専門医が7名(うち2名が指導医),がん治療認定医が4名,日本小児血液・がん学会認定外科医が3名と,小児がん治療の経験が豊富な医師が多数在籍しています。小児悪性固形腫瘍の中で最も多い(脳腫瘍を除いて)神経芽腫から腎芽腫を代表とする腎腫瘍,横紋筋肉腫,卵黄嚢癌や絨毛癌のような非常に希少な腫瘍まで幅広く,小児悪性固形腫瘍全般に対応可能です。また,奇形腫のような小児良性固形腫瘍にも対応しています。
小児固形腫瘍は希少ですが,当病院では年間およそ40件ほどの新規症例の診断・治療に従事しています。小児腫瘍専門医や腫瘍病理専門医,放射線治療医と定期的にtumor boardを開催して,より適格ながん治療を目指しています。

腫瘍センターの2021年実施件数は8,517件生物学的製剤含:9,111件です。当該診療科は消化器外科,乳腺内分泌外科,呼吸器内科,血液・腫瘍内科,泌尿器科,皮膚科,整形外科,消化器肝臓内科,婦人科,脳神経外科,耳鼻咽喉・頭頸部外科,小児科の12診療科です。生物学的製剤を含めた場合,リウマチ膠原病内科,小児外科及び脳神経内科を含めた15診療です。承認レジメン数は963あります。
腫瘍センターでの有害事象について委員会にて月1回分析し,情報共有及びマニュアル整備を行っています。適切且つ安全ながん治療を推進しています。
(投与基準の設定成人・小児,中止基準における好中球フロー,患者からの電話対応フロー,高血圧対応フロー,在宅治療フロー,血管外漏出対応,被爆対策およびirAEに対するチェック評価)

緩和ケアの取組み

緩和ケア・痛みセンターでは,緩和ケアチームのカンファレンスを始めとしたチーム活動や緩和ケア外来を行っています。

がん(循環器疾患含む)に関わる全ての診療科の小児から高齢者までを対象に活動しています。患者及び家族を中心に主治医,看護師,関連する専門職種,緩和ケアチームの関係が密接なのが特徴で緩和ケア外来でも多職種による診察を行い,外来主治医と連携しながら,患者と家族が安心して症状緩和と治療の継続ができるように支援,そして治療の終了の意思決定支援や,療養環境や療養場所の相談では,ご本人の希望に可能な限り添えるようサポートしています。

2019年から小児科のがん患者及び家族の緩和ケアにも取り組んでいます。子どもサポートチームと称し,小児科の医師,心理士,HPS(ホスピタルプレイスペシャリスト)等も加わった多職種でのカンファレンスを毎月開催して,ニーズを発見し共有することで小児がんの緩和ケアの向上に努めています。

2019年から緩和ケアチームで関わった患者が亡くなった後の,家族のグリーフケアの取組みも行っています。ご家族に2ヶ月後にグリーフカードを送付し,希望があればチーム看護師や心理士が家族面談を行い,うつ症状が強い場合はチーム精神科医とも連携して喪失体験を乗り越えるお手伝いをしています。

毎月事例検討会ないし勉強会を開催し,院内の各職種スタッフの振り返りや知識のアップデートをしています。また,厚生労働省の指針にもとづいた緩和ケア研修会を開催して,緩和チームメンバーは講師やファシリテーターとして主要な役割を担い,院内及び地域のがんに携わる医療者の知識向上と交流の場となっています。

がん相談支援センターの取組み(看護師や社会福祉士,精神保健福祉士等の医療従事者の配置を含む)

開設時より看護師と精神保健福祉士の相談支援体制を構築し,平成27年度から社会福祉士も加わり,多様な相談に対応できるよう体制強化しています。相談ケースによっては看護師,MSWが同席して対応を行い,相談者から高い満足を得ています。相談員は認定がん専門相談員取得や相談員指導者研修を受講して,質向上に努めています。また,がん相談支援センターとしての質向上につなげるために,利用者からのフィードバックを得るための満足度調査を毎年実施して,継続的に体制の改善・強化を図っています。

治療や医療保障,不安に関する相談だけでなく,就労支援として看護師,MSW,社会保険労務士,ハローワーク参加の患者勉強会を開催して,患者の要望に沿った患者セミナーや語らいの場も企画開催しています。

がん相談支援センターを院内・院外の患者,家族どなたでも利用可能なことを病院HP及び院内掲示並びに配布物で分かりやすく提示しています。また,がん相談支援センターだよりを発行し,当病院内だけでなく,板橋区女性健康支援センター,豊島区保健所,練馬区保健所,日本大学病院,区西北部医療圏がん診療病院等へ配布しています。板橋区の情報サイト「健康ネット」に区民向けにがん相談支援センターの紹介と利用法を掲載しています。また,健康ネットが企画したイベント等に参加して,がん相談支援センターの啓蒙活動を行っています。

当病院の属する区西北部の特徴について

がんの治療を行っている病院が多く存在するため患者さんも多いことが特徴です。その中で当病院は特定機能病院としての機能を生かした治療を行っています。

乳がんの治療においては,地域連携による複合的な診療を主眼においています。特に乳がん検診には力を入れており,早期発見・早期治療による予後の向上を目指しています。板橋区においては2006年から医師会と連携して,区内の対策型検診におけるマンモグラフィを全て当病院で読影年間約8,000症例程度を行い,医師会に読影結果を返却して医師会の先生方が検診受診者に説明するといったシステムを構築し,乳がんの早期発見・早期治療を具現化して,予後の向上の一助となっています。上記の地域連携システムの構築により,当病院の乳がん初診患者のうちStage 0,Stageの早期がんの占める割合は70%を越えており,他の医療施設と比較して,早期がんの比率が著しく高いです。当病院のStage0の10年無再発生存率は100%,Stageの10年無再発生存率は92%であり,検診発見乳がんの増加は生存率・無再発生存率の向上の一助となっています。手術療法についても,一次一期再建,二次二期再建を施行することにより,自己の乳頭・乳輪を温存した上で正面から傷の見えないQOLの高い術式での手術療法を行っています。また,遺伝子診断,治療を積極的に行っており,チーム診療で対応しています。

板橋区には,保健センターに女性健康支援センターがあり,区内の医療機関(板橋区医師会・東京都健康長寿医療センター・日本大学医学部附属板橋病院・東京都保健医療公社豊島病院・帝京大学医学部附属病院・日本コンチネンス協会),区民代表,行政の医師,看護師等の代表者で『当病院のがん治療における強み板橋区女性健康支援センター運営協議会当病院のがん治療における強み』当病院のがん治療における強みを年当病院のがん治療における強み1当病院のがん治療における強み回開催して,がんを含めあらゆる板橋区の保健衛生行政に関する取り組み事業について意見交換を行っています。また,女性健康支援センターでは,区内在住,在勤の乳がん患者を対象に『乳がん体験者の会(オアシスの会)』の運営等自助グループ支援を行っています。年間プログラムの一貫として『再発転移の会』や『ミニ講座』を開催しており,当病院がん化学療法看護認定看護師が相談や講師を担当しています。

地域連携の取組みについて(がんの医療圏における取組みや役割等)

がん診療連携拠点病院として地域連携がん診療セミナー(年3回)を主催して,医療圏内の他大学病院との合同セミナー(年2回)や,地区医師会と東京都連携手帳(がんパス)の研修会を実施しています。
また,地域チーム共同参加型研修会(地域緩和ケア連携調整員研修やサバイバーシップ研修会等)に参加して,啓蒙啓発と均てん化のための役割遂行に取り組んでいます。

地域連携クリティカルパス(がん・緩和ケア)を推進し,各医療機関との役割分担と連携ネットワーク構築をしています。

療養先選定の際には,入院外来を問わず,院内の入退院支援看護師やソーシャルワーカーが院内チームとも相談しながら,患者の意思決定を尊重して地域医療・介護との連携を実践しているのが当病院の地域連携の取組みの特徴です。

当病院のアピールポイント(診療実績,診療内容,患者への情報提供など)

進行肺がん患者にがんゲノム連携病院としてがんゲノムパネル検査を数多く行い,抗がん剤の治療選択に活かしています。そのためゲノム検査を行うにあたり,従来より大きな生検検体をクライオバイオプシーなどにより積極的に採取しています。

肝がんの治療

他施設にて診断された症例を手術することが多く,当病院の肝がん手術件数は全国屈指です。また,原発肝がんだけでなく肝転移症例について,手術,化学療法を系統的に行っており,肝がんにおけるどのような状況でも当病院ではスムースな肝がんの治療が受けられます。

胃がん,大腸がん

進行がんにおいては化学療法を積極的に行い,手術と化学療法を組み合わせた最も治療効果の高い選択を行っています。胃がんについては当病院で積極的に参加した臨床試験結果の有効性が証明され,ガイドラインにおける標準治療に採用されています。

放射線治療

放射線治療専門医が3名,放射線治療専従技師が9名(その内,医学物理士が3名,放射線品質管理士が2名),放射線治療専従看護師が4名で年間530名程度(強度変調放射線治療(IMRT)が139名,体幹部定位照射が36名,小線源治療が48名)の治療を行っております。
一般的な通常照射に加え,脳転移に対する定位手術的放射線治療,肝細胞がん・肺がんに対する呼吸性同期下でのIMRTを用いた定位放射線治療,脳腫瘍・頭頸部腫瘍・肺がん・前立腺がん・子宮がん・小児がんに対するIMRT,前立腺がんに対する低線量率小線源治療,子宮がん・軟部腫瘍などに対する画像誘導小線源治療,小児から大人に対する血液腫瘍に対する全身照射,RI療法など粒子線治療以外の全ての放射線治療を提供できる施設は,同一圏域の中で当病院のみです。
また,日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)の放射線治療グループに東京都内で属している施設は,都立駒込病院,がん研究会有明病院,国立がん研究センター中央病院,昭和大学,東京大学,慶応大学,順天堂大学と我々の施設のみで,質の高い安全な放射線治療を提供しています。

口腔機能管理について

当病院では,手術療法患者において術前の段階から歯科口腔外科が積極的に介入する周術期口腔機能管理I・IIを行っており,年間650名程度の患者に対して周術期口腔機能管理を行っています。更に手術のみならず,化学療法や放射線療法患者に対して周術期口腔機能管理Ⅲを担当科,担当看護師との連携の下,病棟での定期的口腔衛生管理を行っています。

小児外科

24時間365日救急患者対応しており,進行の速い小児がんに対してより迅速に診断・治療を進めることが可能です。当病院では小児がん診療に小児腫瘍専門医や小児外科医だけでなく,腫瘍病理専門医,整形外科及び脳神経外科の腫瘍専門医,放射線治療医,ホスピタルプレイスペシャリストを含む看護スタッフが関与しています。Tumor boardや小児緩和ケアカンファレンスを定期的に開催したり,長期フォローアップ外来を設けることで,チーム全体で初診から退院後のフォローアップに取り組んでいます。

がん診療病院からの病理診断コンサルテーションを受け入れており,難解症例,希少がんなどに関する地域のがん診療に貢献しています。

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