膵臓がんについて
特色・方針
当科では術前審査腹腔鏡や内科医師と連携し超音波内視鏡下生検を行うことにより正確な術前ステージングを目指しています。ステージごとに周術期に使用する抗癌剤や治療戦略が変化するため重要な作業であると考えています。また，手術は積極的に低侵襲を取り入れて，患者さんの体に負担の少しでも少なくなるよう心掛けております。しかしながら肝胆膵領域の腹腔鏡手術は難易度が高いため，限られた専門施設でしか行われていないのが現状であり，慎重に適応を判断しながら膵癌に対しても低侵襲手術を導入しております。
治療法
膵癌治療の選択に際して近年２つの変化があります。1つは，膵癌の切除可能分類による治療選択であり，もう一つは，同分類を背景とした周術期の抗癌剤治療です。
膵癌の切除可能分類には①切除可能②切除可能境界と③切除不能の３つに大きく分けられますが，切除不能とは，腫瘍が主に重要な脈管に浸潤する（局所進行）もの，離れた臓器に転移をする（遠隔転移）ものに分けられます。
EUS関連手技とは先端に超音波発生装置の付いた超音波内視鏡で消化管から膵臓を観察し診断と治療を行う手技です。具体的にはEUSによる膵臓がんの検出，超音波内視鏡下穿刺吸引組織・細胞診（EUS-FNA），胆管狭窄に対する超音波内視鏡下瘻孔形成術（胆道ドレナージ術），膵臓がんによる痛みに対する超音波内視鏡下腹腔神経叢ブロックを行っています。
① 切除可能，切除可能境界膵癌
切除可能，切除可能境界膵癌に対しては，術前補助化学療法を行ってから手術を行い，術後補助療法を行うまでが標準治療とされています。術前化学療法として切除可能膵癌に対してはGEM（ジェムザール）＋TS-1療法を行い，切除可能境界膵癌に対してはFOLFIRINOX（5Fu，オキサリプラチン，ロイコボリン，イリノテカン）またはGEM+nab-PTX（アブラキサン））を選択しております。また当科では術前画像ではとらえられない微小転移の検索目的に審査腹腔鏡を行なっております。もし微小転移が術前に検出された際には，切除不能膵癌と同様の抗癌剤治療を6～9か月ほど行い，病変の進行が抑えられ，遠隔転移を認めない方には再度手術による治療を提案します。
② 切除不能膵癌
大動脈や下大静脈などの大きな脈管やその1次分岐の太い動静脈，また，門脈と主要臓器への動脈（腹腔動脈や上腸間膜動脈）の同時の浸潤などを有するものです。拡大手術の優位性は証明されておらず合併症率が高いため抗癌剤が第一選択となります。しかし，近年抗癌剤の多剤併用療法FOLFIRINOXやGEM+nab-PTXおよび一部放射線療法との組み合わせにより，切除不能な癌に対する手術が可能となる例が報告され，コンバージョン手術といいます。コンバージョン手術の判断は，抗癌剤治療により腫瘍の縮小がある程度の期間（6～9か月ほど）維持されている事が必須の条件となります。
遠隔転移を有する膵癌は，主に血液の流れにより癌細胞が全身に転移（主に肝臓や肺）をした一部を画像でとらえているだけなので，がんを全身病と考え全身に薬効が達する抗癌剤が第一選択となります。
③ 術後の再発予防
手術後の抗癌剤治療としては，S-1およびGEMが行われます。本邦でおこなわれた臨牀試験の結果では，S-1がGEMと比較して（全生存の中央値：25.5対46.5か月）非常に良い結果であったためS-1が推奨されています。しかし，欧米人では代謝酵素の欠損によりS-1の忍容性が悪くGEMが使用されており本邦でもS-1が続けられない方ではGEMが用いられています。手術後2か月以内を目安に6か月程度を目安に投与が行われます。
担当医師
岡村 行泰
役職
主任教授
資格認定
- 日本外科学会 専門医・指導医
- 日本消化器外科学会 専門医・指導医・評議員
- 日本肝胆膵外科学会 評議員・高度技能専門医
- 日本内視鏡外科学会 技術認定医（肝臓）
- 日本肝臓学会 専門医・指導医
- 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
- ロボット手術（da Vinci）certificate取得（術者）
中山 壽之
役職
准教授
資格認定
- 日本外科学会 専門医・指導医
- 日本消化器外科学会 専門医・指導医
- 日本肝胆膵外科学会 評議員・高度技能指導医
- 日本肝臓学会 専門医・指導医
- 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
荒牧 修
役職
准教授
資格認定
- 日本外科学会 専門医・指導医
- 日本消化器外科学会 専門医・指導医
- 日本移植学会 認定医
吉田 直
役職
診療准教授
資格認定
- 日本外科学会 専門医・指導医
- 日本消化器外科学会 専門医・指導医
- 日本肝胆膵外科学会 評議員・高度技能専門医
- 日本内視鏡外科学会 技術認定医（胆道）
三塚 裕介
役職
助教
資格認定
- 日本外科学会 専門医・指導医
- 日本消化器外科学会 専門医・指導医
- 日本肝胆膵外科学会 評議員・高度技能専門医
- 日本胆道学会 認定指導医
- ロボット手術（da Vinci）certificate取得（術者）
